佐原 伊能忠敬記念館へ

かねてから行かなければ、と思っていた千葉県佐原の 伊能忠敬記念館 を訪ねた。

例によって、妻による旅の記録

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 天文好きの夫が、伊能忠敬記念館に行っておかねばならないと言い出した。
以前も言っていたがその時は実行に至らず、奥さんに丸投げでいいとなったら「行っておかねばならない」ということになったらしい。

 伊能忠敬記念館は佐原にある。彼が生まれたのは銚子で、17歳で婿養子に入ったのがこの佐原の伊能家、20年かけて資産を3倍に増やしたのちに晴れて隠居の身の上となり、それから日本を測量して歩くなどして、実測による日本地図を作成する偉業をなした。・・・50歳で隠居と聞けば驚くが、当時の平均寿命を思えばこんなもんか。

 

なんて映画もあったが、アレはちょんまげ結ったおじさんや爺さんたちが天文技術と数学を駆使して暦を作る話だった。天地明察の主人公と伊能忠敬が違うのは天地明察の方はそういう家柄の生まれだったが、伊能忠敬は趣味家というか素人から始めてお終いには幕府に業績を認められて大出世したということだ。地図作りの全国行脚の物語は、井上ひさしの「4千万歩の男」

 にくわしく描かれている。

 で、佐原である。千葉だよね、という認識だったが地図を見ればちょっと先は茨城、
水郷潮来とか鹿島神宮とかがある。伊能忠敬記念館だけなら日帰りも可能だが、そのあたりにはこれと言って縁もない。2度と行かないかもしれないとなれば鹿島神宮くらいは見ておこうやということになった。

 元々は銚子を巡って美味しいお魚でも食べて、と夫は言っていた気がする。しかし広いお風呂を求めて温泉旅館を探してみてもどうも宿泊施設自体が少なすぎる感がある。今時どこでも刺身くらいは出て来るし!となり、面倒になって

 に決めてしまった。

 東京駅からだと高速バスが安くて便利である。片道2千円、2時間くらい。東京駅発、朝10時40分銚子行きに乗ればいいらしい。東京駅までは、うちの近くから乗れる高速バスで行こうとしたが、それだとかなり時間が余るし、時間が読めないバスより電車で行こうと夫が言う。

 結局東京駅に到着したのは出発時間ギリギリで、JRバスの売り場にチケット買いに行ったらパスモなら安くなりますよと言われ、銚子行きは3時までありませんがと言われた。ハテ、10時40分の銚子行きという情報は何だったのかということになるが、バス会社が違っていたらしい。同じ八重洲口でも道路の向こう側が本来の乗り場だったわけで。「調査不足だねえ」と夫はうれしそうに言う。連れて来てもらって、生意気!

 佐原と鹿島神宮は同じJR鹿島線にあることだけは覚えていたので、JRバスに乗って鹿島神宮に行くことにした。予定していた初日と2日めの日程を逆にして、後は乗ってから考えましょう!スマホもあるしな。

 コロナ関連で、今では当日券はバスに乗るときにパスモを差し出せば良くなった。少し前までは売り場でチケット買ってきてくださいと言われて目の前のバスに間に合わないことすらあったのに。密を避けるためにと待合室からは椅子もきれいさっぱりと消えた。おかげで夫、座る場所がない。

 鹿島神宮行は何本も出ているらしくJRバスの停車場では40分に乗れなくても50分のがありますよと言われた。鹿島方面には一体何があるのか、まさか神頼みで込み合ってるわけもあるまい。しかし停車駅をみれば宇宙センターとか製鉄所とか華々しいものがあり、こちらが何も知らないだけのことだった。

 車窓からは山の間を切り込むようにして作っている田んぼが見えた。その山もたいして深くはない。そのまま行くと平らな場所が増えて、家という家には必ず生垣が備えられるようになる。平らで風をさえぎるものがないんですね。でも生垣、そんなに高くない。

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バス停となっている鹿島セントラルホテルでビジネスな服装の皆さまが続々と降りていき、宇宙センターのアンテナを横目で見て、鹿島神宮で降りたときには私たちが最後のお客だった。
 
目の前に広がる緑が鹿島神宮であろうとそちらを目指して歩くと、途中にバス停があった。やれうれしやと思うのは、ここでマジメに鹿島神宮を味わっていたら電車に間に合わないことがわかっていたからである。JR鹿島線、時間によっては2時間に1本。だがこういうところだとバスで事情を補えたりもする。
 
ここは土地の人に聞きたいところだが多分無理、土地の住民は電車もバスもとっくにあきらめているからだ。魚沼だったか、JRの職員に「日曜ダイヤだから次の電車は2時間後しかありません」と言われたが、その10分後に目の前にバス停から目当ての駅に行くバスに乗れたこともある。
  
xxに行くのならその先を曲がったところにあるバス停からx△行きのバスに乗って行き、〇〇のバス停で降りて〇△行きのバスに乗り換えたらいいですよ、な~んてのは公共交通機関を愛用してやまない郊外住民のオバサンたちの話なんであるが、もしかするとこれはこれで異常な話なんだろか。
 
鹿島神宮、本宮はもう少し大きいかと思ったが、こんなふう。境内広さは神宮の名に恥じない。

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苔むした檜皮葺の屋根がしぶく美しい。

鹿園もあり、鹿が鳴きかわしている。

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さざれ石とやらが置いてあり、来歴を読もうとするも来歴を記してある石が苔むしすぎていて読めない。

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なぜか本宮より立派に見える奥の宮、それを下った先には池もあり、鯉も泳いでいる絵があったので見に行った。

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だが鯉を探してもいない。良く見ると池の裏手に金魚と見まがうような緋鯉1匹と10倍くらい大きい黒い鯉1匹とが寄り添って浮かんでいた。なんでこんな事態になったのかは、神宮に聞く話でもない。

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 帰り道、幸せそうな神前結婚のカップルを見ながら、さてこれからどうしたらいいのか、とりあえずバス停に戻らねばならない。道案内の看板通りに行ってみると先刻降りた高速バスのバス停から、大回りして鹿島神宮に入ったことを発見。まあそりゃあ神宮だもの鳥居から入らないといけないし、近いからと言って横の駐車場からってわけにはいかないんだろうけど、なんだかなあという気がする。
 
 「かんぽの宿潮来」からは延方駅までお迎えが来ることになっている。しかしその時間に間に合うかどうかはわからない。最悪は近くの駅まで行ってそこからタクシーに乗ることになる。迎えが延方駅に来るからには最寄り駅は延方だということか、潮来と名前がついているってことは潮来駅からでもそんなに遠くないってことか?
  
 バス停の時刻表には現在のバス停の名前と経由するらしい地名が4つ5つ並んで表示されている。そこを通るのはわかる。しかし今現在いるバス停がその地名のどこにあたるのかがわからない。その看板も二つあって、xx行きとxx行きなのはわかったが、延方駅とも潮来駅とも書いてない。二つまとめてあるので、現在いるバス停にどちら行きがくるのかもわからない。
 
 そうこうするうちに反対側の車線をとろとろとバスが来た。走って行って「潮来駅に行きますか?」と運転士に聞いたら行くという。よしっ、と乗り込むとバスは鹿島神宮駅を通り過ぎて丘に登り、小山記念病院というご立派な病院に着いた。そしてバスは踵を返してまた鹿島神宮駅に到着するのである。そこで何人かが下りた。夫、本当に潮来駅に行ってくれるのかとバスの運転士に確かめる。
 
 バスに路線図は貼ってあるが、全部のバス停が表示されてないのか潮来駅という表示が見つからない。だが何という奇跡か、バスは延方駅に、それも宿からの送迎バスが到着するより前の時刻に着いたのである。後から見たら潮来駅があるのはそれからぐるっと行った先で、タクシーに乗ったら運転手さんをとてもとても喜ばせていたはずだった。
 
 なんとか送迎バスに乗れて宿に到着。かんぽの宿ったらファミレスみたいなもんかもしれないが、なんだかんだ言って全国版のスタンダード機能があり、田舎の気の利かなさみたいなものがない。お風呂は加熱だったか加水だったか忘れたが温泉、当然広いし低温と中温のがあり、私は宮部みゆきの文庫本を持って行って低温の方に1時間ほども浸からせてもらった。

 夕食の場に入っていくなりバターが焦げる香りに直撃される。常陸牛を加えたコースを選択した人々がいるらしい。大丈夫、うちもそれにした。そのうえでなまずも別注した。食べ物に関しては漏れを出したくはない。懐かしかったのがなまずの皿に蓮蒸しがついてきたことで、これ、レンコンをすりおろしあんかけにして蒸してある。金沢郊外のレンコンだとねっとりと固まることになるが、こちらのはそんな風にはならない。
 

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 日本酒的な料理のために熱燗1合を注文、当然ビールも飲みフロントでGoToの地域振興券ももらったことだしとワイン1本(チリワイン、ボトル2千円)も注文した。かんぽの宿のイメージ通りで何もかもお値ごろ、お部屋は清潔。満足して寝た。いただいた地域振興券は夕飯の酒で消えた。枕が合わず激しく寝違えたのは別の話。