今どきトランシーバーには、Power/SWR 計はビルトインされているので製作する必要性というか動機にならないのだが、アンテナ( 特に MLA )の測定のため Tandem Match Coupler を使って Power/SWR Meter を作ってみた。
主な特性としては
・通過型 Power/SWR Meter
・測定周波数 1~50MHz
・最大測定電力 100 W
・測定 SWR 10 以下
・デジタル表示
製作したものは画像のようなもので、TRX にダミーロードに接続して測定中のところ。基板の上部が Tandem Match Coupler で進行波と反射波を分離する。中心の基板は分離された信号の強度を測定するもので AD8307 Log AMP 、レベル差・位相差を測定できる AD8302 を実装している。青いドーターボードは 16bit AD コンバーター ADS1115 である。それぞれの値を取り込み、ESP-32 TTGO ボードで演算処理をして、Power/SWR を表示している。
この測定器のキモである Tandem Match Coupler とは、二つのコアトランスを使って、進行波(FWD)と反射波(REF)を検出するものである。特徴として
・回路が対称でトランスしか接続されないのでシンプル
・検出部に調整点(トリマなど)が無い
・ダイナミックレンジが広い
・方向性に優れ、測定誤差が少ない
それぞれのトランスの巻き数を N とすると、FWD には RF In の 1/N*N の電力、REF には 1/N*N の反射電力が出力される。
RF Out の Return Loss は FWD - REF であるので、それぞれの値を AD8307 Log AMP で測定し、演算処理を行って進行波電力、Return Loss( SWR )を求める。
全体の系統図は下図の通りとなる。
さて、Log AMP AD8307 や AD8302 で測定するときには入力レベルに留意する必要がある。データシートを見ながら、
・測定可能な電力範囲を 0.1 W(+20dBm)~ 100 W(+50dBm)
・AD8307 の入力範囲 -75dBm ~ +15dBm
・AD8302 の入力範囲 -60dBm ~ 0dBm
としてレベルダイヤを検討した。トランスの巻き数 N には、測定電力、周波数についてトレードオフがあるので、それらを勘案して下図のよう設定した。使用したコアは #50-43 で巻き数は 14 である。
ネットにある製作例をみると、アナログメーター表示のため、かなり複雑な構成となっている。ここは、ESP-32 TTGO と ADS1115 16bit A/D を使用して信号処理を行い、液晶ディスプレイに表示することにした。ソフトは Arduino で開発した。今のところ、
・FWD/REF の値を AD8307 で測定
・これらから、進行波電力、SWR(Return Loss)を計算表示
を行っている。実際に使用してみると、正確に表示され、満足する結果が得られた。
装置には、AD8302 により FWD/REF の 信号強度差、位相差も測定できるようにしてあり、負荷側(アンテナ)の特性をいろいろと求めるようにしてあるが、その処理はもうすこしかかるか。