クロアチア旅行 4 スプリットへ

6月20日(金曜日)
 
早朝目が覚めて散歩。田舎。幹線道路を挟んで両脇に農家が不規則に続く。家も広いが農家となれば納屋も必要だし、家の周囲には井戸があるし、薪が沢山積んである。庭にはちょこちょこ果樹が植えてあって、思いっきり大声を出せば聞こえる??程度の距離に隣家があり、どこの家でも大きな犬とネコと鶏は当然、羊か牛、場合によっては両方、ついでに馬もいそうな感じ。
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 犬は当然吠え放題、お風呂は免除。知らない人間には吠えても鶏やヒヨコ達には無抵抗。ネコがいてこちらをじっと見ていたので、「にゃあん?」と言ってやったら、ぴくっとした。「しゃべった!」と思ったに違いない。家の向こう側は畑で、丘陵の奥まで続いている。それはこの民宿も同じで、花を植えた花壇はあるが、花の足元にはワラにまみれた何かのフンがさりげなく置かれていた・・・。
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 クロアチアに来て、初めて他人が作ってくれた朝食をいただく。オムレツがついてきた。サラダ油ではなく、ラードで焼いていた。コーヒーは南欧式のコーヒーだった。会計をすませて、宿の人に車で駅まで送ってもらう。
今日こそは電車に乗るつもりだが、昨日を思えばバスが迎えにきても不思議はない。水を買わねばならないが、キオスクなんてない。それで荷物をごとごとひいて駅から300mほど戻り、スーパーまで行くことになる。駅近の家々の庭には果樹が植わっていて、農家ではないようだが広い。あちこちから視線が飛んでくる。おじいさんが見ていたので、会釈をしたら会釈が返ってきた。お父さんと一緒に男の子が出てきて、お父さんが行ってしまった後も、こっちを見ていたので、手を振ってやったら、手を振り返してきた。この反応は嫌いじゃない。
 
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 電車は遅れてやってきた。走り出したその速度の遅いこと遅いこと。特急ったって、これじゃ各駅に止まらないというだけではないか。それでも車窓から見る風景は特別なものだった。石ころだらけの低い山が続く。その斜面には、時々人の手による石積みが出現し、段々畑のようだ。だが、何が植えられているわけでもない。

 クロアチアの人口は425万人。その人数で賄いきれないものが石積みだけの畑なのかと思う。日本では裸の畑ではなく農業用ハウスまで建て、季節に関係なく野菜を供給して山のような品種で消費者を釣っているのだが、それでも足りないし食糧自給率はヤバい。どこだろうとも自国で賄えないものは輸入するしかない。南下するに従って、畑にはオリーブの木が増えていったが、その木はまだ大きくはなかった。

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 隣席では、昼ごはんをはじめるところだった。(彼一人であり、先刻よりマンガの原稿を描いている。揺れるので大勢に影響ないところを書き込んでいるのでいた)何を食べるのかと思っていたら、カバンからタッパーを出し、口をつけて何やらの液体をずずっとすすり始める。西洋人が音たててすすってるのを初めて見た。彼はかなりの量をそうやって飲み込み、しかる後に底に残った具をスプーンですくって食べた。元々、液体を弁当にする方が蛮勇だろうと思うが。
 その次に彼は袋入りのナッツを取り出し、ついでヨーグルトにとりかかった。こちらは水と、ホテルの朝食で作ったサンドイッチがお昼だったが。

 西側は石ころだらけの低い山が延々と続き、東側は平地となっていて時に点々と家が見えるといった状態が続いた。何度か停車し、いずれも特急列車が停車するからと言って周囲に大きな街が見えたわけではない。(そりゃそーだ、これから行くクロアチア第二の都市、スプリットからして人口が20万人にも満たない)ともあれ電車はのろのろなりに順調に進み、ぽかっと海が見え、遠くに集合住宅も見えた。スプリットだ。左の小高い丘に点々とあった家は確実にその点の間をせばめるようになり、ベランダはどの家も海の方に向けられていた。

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 スプリト着。大体2時頃で、20分くらい遅れた。ホームには紙にアパートの宣伝を書いたものを掲げたおばさん達が沢山いた。アパートメント、これこそが今回の旅のテーマだ。なぜかクロアチアではホテルが少なく高価で、ろくな数が存在しない。代わりに台所のついたアパートメントが山のようにある。当然、そっちの方が安い。我々が泊まるのは世界遺産があるような観光地なのだから、レストランさえあれば、ホテルでなくても不自由はしないはず。


 駅を出ると、目の前は港で、様々な船が停泊していて、歩道脇にはビーチ用品や屋台のお土産屋が延々と続いていた。絵に描いたような保養地の駅前だが、なぜかパン屋が多い。しかしこれもアパートメントホテルでバカンスをする西洋人にしてみれば、当たり前かもしれなかった。
 夫、またグーグルマップのおかげでつるつるとホテル前の路地まで到着、すると目の前に亜麻色の長い髪の娘さんが出現、大家さんの娘さんが迎えに出てきてくれたのだった。この娘さんは身長180cmほど、手足が長くすらりとしているが顔は子供子供している。学校が夏休みなので、おこづかい目当てで手伝っているのだろうかと最初は思った。が、案内された部屋で父親に促されてはこの娘さんが英語で説明する。こうなると子供のお手伝いではなく、アパート経営の女将教育ではないか。
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 カギをもらって、荷解きを始める。ヘンなもので1階でも不安はなかった。なんとなく、クロアチアを信頼するようになってきていた。ドアを開けたらいきなり土間のLDK、というのは不思議な気分だったが、そこそこ不自由しない程度のものは置いてあった。物干し、洗濯用のたらい、台所には湯沸しはもちろん、ナベは大中小、お皿にカップに包丁にまな板にチーズおろしまで。昼寝をしながら、妄想した。ホーローのナベがあるなら、ゴハンだって炊ける。調味料は買わねばならないようだが、高いものではない。塩、胡椒、オリーブ油に酢。レモンにニンニクだって、売っていないわけがない。そう言うと夫は大賛成。ワインは普段よりグレードアップできるし、食費が節約できて一石二鳥ときたもんだ。
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 所帯くさい話はともかく、スプリットとはどういうところなのか。その昔のローマ皇帝ディオクレティアヌスの隠居所として宮殿が建造され、その後ローマ帝国は滅亡したが、なんだかんだで宮殿跡に周囲から人が集まってきて街になり、現在は世界遺産である宮殿とリゾートを売り物にクロアチア第二の都市(20万人ぽっちだ)、観光地として栄えている。(なるほど街はアパートメントハウスだらけで、日本みたいに短期間にお金を使って下にも置ぬおもてなしを楽しむわけではなく、長期間のお休みなのだからたまには外食するにせよ自炊前提でのんびりしに来ているというのが実感として良くわかった。)

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 で、その遺跡は青空市場の向こう側にあった。アパートを出るともう、保養地の楽しさ満載、白いミニスカートながらに制服のきれいなお姉さんたちがいるなと思えば、これが警察官。
「あれが?」と夫も驚く。だけど腰には・・・。
海を左手に、右側が市場や宮殿、旧市街となる。夫、何の迷いもなくつるつると市場にも宮殿にも入っていく。下調べ、完璧すぎ。でも、その青空市場は大体同じようなものばかり売っていて、全体の品揃えも普通すぎた。だますとかふっかけるとかでなく、この人達らしく、真っ当に買う気を起こさせる方法はあるはずなのに、工夫が、自分の前で財布を開けさせる工夫がいまいち足りないように見えた。日本の道の駅を見せてやりたかった。

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 宮殿はその後入ってきたキリスト教徒によって教会やらなにやらにもなっているが、その中心部だけはそのままになっていて、ローマ兵のコスプレをした人達が観光写真用(タダだ!)のバイトだかボランティアだかで立っていた。宮殿は本当ににぎやかで、いずれも格好はリゾート、
男子は半ズボン、女子は肩やら脚やらを出していないヤツはいない。そんな中、なれないのか一人の若い女の人がうれし恥ずかしの感じで長いスカートをつまみながら彼氏と歩いていて、
かわいいなんてもんじゃーない!(ビーチサンダルはいてても180cmくらいあったけどな)
いやほんとに、宮殿よりは人間模様の方が面白かった。
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 市場ではトマトを買った。kg売りと言っても好きなだけとって渡せば計算してくれる。あまり安くないなとは思ったが、6月で農業用ハウスがないとなれば、これは輸入モノかもしれなかった。アパート近くのスーパーにも行ったが、市場の方が少々安いくらい。ただ、一度でそろうのが便利で、塩も胡椒も小さいのがあったし、バルサミコ酢は400円ほど、アルミホイルも買った。醤油もガリも海苔さえも売ってた。(ワサビとラップが見当たらなかったけど)いっそお握り持って観光したくなったが、夫に止められた。

 買い物上生じた問題は、オリーブ油がお高いことだった。1リットルで千円ほど。モツアレラチーズが安いはずだし、思いっきりカプレーゼを食べようと思ったのに、オリーブ油がなくては困る。あちこち探したのだが、どうやらクロアチアでは通常ヒマワリ油を使っているらしい、ということが判明。内戦の後に植えられたオリーブはまだ小さくて油をしぼるほどではないのか、それとも外貨を稼ぐために全部輸出にまわしてしまって、国民は安いヒマワリ油を使っているということなのか。なんにせよ、ないものはない。小さなサイズのものもなかったので、仕方なく1リットル入りを千円ほどで購入。もちろん、次に行くドブロブニクまでこの油は持っていくことを決意。使い切るのはムリでも、無駄にしたくなくなったのである。そうそう、ないといえば、バジルも見当たらなかった。仕方ないので、市場で鉢植えを買った。そこそこ大きくなったのを買って鉢ごと水遣りしながらつまんで使えば新鮮なままで使える。これも結局オリーブ油同様ドブロブニクまで持っていくことになった。
この日は魚市場も見つけたが、なにせ夕刻であり、ろくな品物はなかった。また来るぞ!
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 クロアチアのスーパーと言えば「コンズム」が代表的で、ここには原種のロケットサラダも、うちの庭ではとっくに季節が終わっているマーシュ・レタスも100gの袋に入って1袋200円ほどで並んでいた。この2種類を自分が下ごしらえしなくて済む日が来ようとは思わなかった。普段は種まきから始まって収穫後には葉の間に入り込んだ土を落として洗ってちぎり、それでいてどちらも小さくて、美味しいなりに大変なのである。


 種まきはともかくとして、洗うだけで済むとは、やっほー!で、この日はサラダのほかにクロアチア料理らしき、ひき肉をまとめてあるものを購入、部屋で焼いて食べることにした。ビールを並べ、ワインを開けて、肉を焼くのは夫の役目だった。が、フライパンの前で夫が「えーっとあの。」と言うのでどうしたか聞けば、「菜箸、ないよね?」・・・箸だけは持ってきたし、ナイフとフォークは宿の台所の引き出しに入っている。だが、もちろん菜箸はなかった。日本人にとってはチーズおろしよりか菜箸の重要性がなんぼか高いわけだが。問題の肉は、香辛料と塩がきつく、それはそれでここのスタンダードの味と納得した。
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