1年ぶりの台北 2

 6時。窓の外は薄暗い。24時間営業のモスバーガーの店だけがこうこうと明るい。そこに、ちょこちょこと人が出入りするのが見える。どうやら朝モスが根付いているらしい。モスにはライスバーガーなんてのもあったはずだ。でも、しかし、だって・・・。こちらの当惑をよそに、早朝のマクドナルドでものんびり新聞を広げる70代と思しきおじいさんの姿もあった。
 
 本日はツーリストバスに乗ることにしてあった。スペインであまりの便利さに虜になったので、あるなら台北でも乗ってしまおう!と。500元(2,000円くらい)で、台北中の名所を網羅した2路線が乗り降り自由。それはいいのだが、タクシーは安いし、路線バス料金は一律15元とくれば、まあ、雨は降っていたし車を探す手間が省けたんだから、いっか。
 
 ホテルの朝食の間は日本人だらけ。ごはんをよそっていたら従業員の人が、「日本のおコメは美味しいですよねえ。台湾のおコメは美味しくなくて。」というので、「台湾のおコメだってすぐに美味しくなりますよ。」と答えたら「本当ですか?」と返された。ゴメンなさい、台湾の農業試験場の事情など何も知らないのにいいかげんなことを言いました。
 
 とにかく台北駅前のバスステーションに行ってみた。新宿バスタみたいなところで建物は新しく、きれい。1階にはお土産屋があって、パンは日本のより大きくてそれだけでおいしそうに見えるし、ナッツぎゅうぎゅうのケーキとか、また月餅とかおまんじゅうとかで、うっとり。結局、案内所のおねえさんにバスの発着所はこの建物ではなく、道を渡った台北駅の裏手にあると教わった。
 
 既に5,6人が並んでいた。案内人のお兄さんがシステムを説明してくれるが、調べてきた通り。後ろにおばあさんをつれた男の人が並んだが、バスが来たらおばあさん、すかさず列をすっとばかして乗り込もうとする。連れの男の人、あわてて引き戻す。苦労してきましたね、おばあさん。
 
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 バスは赤線、青線があって、青線は台北市北側の故宮博物館方面に行き、赤線は南側の高層ビル101方面に行く。まずは青線に乗った。巨大な中正記念堂や孫文の像を見ると、ああこれこそは台湾の人々の誇りなんだろうなあと思う。しかし日本人の場合は、何処で誰?皇居だったら京都御所の方が正しい気がするし、まさかハチ公ってことはないし。
こういうのになると未だ日本は江戸時代の中にあり、誇りは日本人全体ではなく、各県の、各藩の中にあるわけで。始まりが神話の中にあるのがいけないのか??
 
バスの中ではイヤホンで各国語の説明が聞ける。それによると、きれいな建物は結婚写真の背景として選ばれることが多いらしい。途中、大同大学というのがあって「おお、ここなら私も結婚写真を撮ってもいいぞ!」と言ったが、その3秒後、本当に結婚写真を撮っているカップルを見てしまった。ツーリストバスを追い越す路線バスの横には、行く先までの経由地が表示されていて、中に「一女中」というのがあった。プロレタリア文学私小説かと思うこれは第一女子高等中学校の略で、メイドさんの紹介所でさえもない。
 
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 夜市の表示を横に見ながら花博公園など通り、バスは故宮博物館を目指す。途中、高級住宅地があるが、台湾の場合は高級旧宅とはオシャレにして豪壮な家ではなく、郊外に立つ、普通の?3階や4階建ての一戸建てのことのようだ。
 
故宮博物館到着。だがバスのアナウンスが、「有名なのは白菜の形の玉・・・」って、それを聞いただけで降りる気がうせた。博物館であって美術館じゃないという何よりの証拠が、展示品の三枚肉そっくりの玉で、すごい書画とか他にいくらでもあるはずなのに、なんで豚肉が一推しなの??
 
その昔、何年か前に来たときのガイドさんによれば、蒋介石の奥さんの宋美齢が、アメリカに渡るときに収蔵品のめぼしいものは全部持って行ったとのことだった。本当かどうかは知らないが、天下国家を論じながら戦った人の奥さんが中国文明の至宝をフツーに私物扱いってことである。お国柄??
 
 故宮は2度見たことがあり、1度目は古い建物のときで、2度目はきれいに建て直した後だった。古い建物のときは本当にふるぼけた中に何でもかんでもどどんと置いてあってよそんちの虫干しのお蔵をのぞかせてもらってる感じが楽しかった。しかし2度目は陳列してある品が少なくなってしまい、つまらなくなった。代わりに頻繁に陳列を替えているそうなのだが、たまにしか来ない観光客はどうしてくれるわけ?ともいいたくなる。バスの説明に出るくらいだから白菜の玉だけはいつも見られるのだろうけど。
 
 出発地である台北駅に戻る。お客さんが少ないからか早めに到着、時刻表によると1分の差で乗り換えられないはずの赤線バスに乗れた。めでたく101を目指す。途中、学校の壁に何やら書いた赤い布が何枚も垂らされているのが見えて、それはxx君、台湾医大合格おめでとう!みたいな内容なのであった。あれは予備校が表示するもので、学校の場合は国体優勝とかそういうのだと思っていたが。ま、台北でそういうのを見た、という話である。
 
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 雨の中、101の前で降りる。トイレに行くべく、降りた場所にあるファッションビルに入るが出店してるお店は大体、日本と同じ。お昼どきだからとフードコートの表示を見るが、例えば「北海道熊牧場」って何を出してくれるお店なのか、北海道で牧場だから、乳製品が充実(そういう言い方もヘンだが)したカフェかと思うけど、なにしろ熊の一文字が邪魔。
 
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 101に向かう。本日は雨なので、展望台に登っても仕方ない。様々なブランドショップも関係なく、フードコートに向かう。これがまたシャレオツなつもりの日式だらけで、例えば牛角次男坊とあるその店の品は、丼の上に高々と茶色の肉を盛り上げたもので、横には四角い海苔が2枚挿しこんであったりする。肉は有難いかもしれないけど、なんてみもふたもないビジュアル。だが、それを持った小柄なお嬢さんが目の前を横切って行った。後をつけて行って、本当に食べきれるものか確かめたかった。
 
 自分達は肉団子が入ったスープつきの定食を買い、一人分を二人で分け合うこととした。
それで十分なのである。が。周囲を見回すと、結構な量の焼きそばとチャーハンセットみたいなのを子供でさえも一人一食分、食べている。今、これだけ食べているってことは、夕食は軽くするんだよね?そうだよね?
 
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 さてこの後はどうするか。ルートに「市場」というのがあるから、降りてみるか。それにしても寒い。
そして、降りてみても市場はない。良く調べてみたら、大きな建物の食べ物を扱う市場があるわけではなく、オシャレな洋服屋さんが多い、台北の原宿みたいなところだった。なるほどデザインはシンプルで、色調はおさえてある。中山駅ちかくのブティックなんて、赤やら緑やらで賑やかだったらありゃしないのに。
 
 仕方なく台北駅に帰るバスを待つ。通りを挟んだビルに「飯BAR」の文字がある。それはもしかして「BAR RESTAURANT」ってことか。日本で飯バーだとしたら、様々な銘柄のおコメが食べられる店、ということになりそうなのだが。それはそれでうまそうだ。
 
 台北駅から地下街を通り、ホテルまで歩いて帰る。中山駅近くの地下街には古書街というのがあり、夫はうれしく見に行くが、それは古い書街であって、古書の街ではないようだった。だが、昔は本当に古書が沢山売られていて、面白かったのに。
 
 一休みして、夕食に行く。夫、昨夜を振り返り、ここはホテルでレストランの予約をお願いした方がよさそうだと判断、レセプションのお兄ちゃんに電話をしてもらう。お兄ちゃん、にこにこと快く電話してくれて、ああああ、こんな時こそはチップやりたい!!
 
傘さして、行く先は三越斜す向かいの北京料理「天厨菜館」。直前の予約だけあって、どうやら最後のテーブルのもよう。もちろん客はこれから現れるのであって、到着したときはテーブルはぽつぽつしか埋まっていない。案内されたテーブルは窓際で、窓から見えるのは「紳士服の青山」。流行っているようで何よりです。
 
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注文は、鶏の細切りと豆苗の炒め物、ヒツジ肉の土鍋煮、からし菜と貝柱の炒め物、最後に餃子。北京料理なので、餃子もアリ。
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もちろん北京ダックこそはアリなんだけど、二人じゃ無理。この店では皿の大きさが大中小と選べて、便利。面白かったのが、からし菜というのがこぶ菜のことであり、豆苗というのがベトナムで食べたスイートピーの芽のようだったこと。もちろんスイートピーは有毒だからあり得ないが、日本で見る工場野菜の豆苗より全然たくましかった。ビールも飲んで、4500円くらい。