1年ぶりの台北 3


 本日も雨。冬の台北那覇は、どーーしても雨。台南なら旱魃らしいが、台北は雨!
今日は三峡の老街に行こうと夫が言う。老街というのは古い街並みのことだが、どうやら私たちは何年か前に、行ったことがあるらしい。一度行ったところにまた行く意味がわからない!と主張するには、私は全部忘れていた。はいはい、出発しましょう。
 
 地下鉄のチケットの自販機は、日本語表示も選択できるのでありがたい。ガイドブックによれば、永寧駅まで行って、それからバスに乗ることになる。しかしこのガイドブックは2014年度版で、今は地下鉄も伸び、事情は少し違っていたのである。助かることには致命的な違いはなく、三峡まで40元。地下鉄とはいえ途中から地上に出るのかと思いきや、地下鉄のまま永寧駅に到着。バス停は割りと簡単に見つかった。目が悪い人がいて、地下鉄だかバスだかの職員が付き添っている。
 
台北は雨のため薄暗かったが、ちょっと南に来ただけで雨はやんでなんか明るい。705、706番916番のバスで三峡老街に行けるはず。バスはどかどかとやって来て、表示を見ると板橋とか西門とか書いてある。ということは、急ぐ必要さえなければ、バスでそこまで行けるのであった。帰りはバスに乗ることに決定!真っ暗の地下鉄よりなんぼか良かろう。
 
バス。100元札が使えない。ああああ、これからいく皆さんは小銭を用意してください。オバカな日本人夫婦に、降りろと言うわけでも、チッ!とやるわけでもなく、今度は車内から親切なおばあさんが何か言いながら寄ってきて、小銭を出してくれる。いやそんなわけにも!一瞬もみあいながらも、小銭がないのでどうしようもない。ミュンヘンやスペインには何かのときの小さいお礼を持って行ったのに、今回に限って忘れている。
 
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 日が射してきて、少し暑くなったと思ったら、すかさず冷房が入る。雨が降ると寒いけど、いったん日が射すと半袖で大丈夫~、というのは沖縄と同じ。ガイドブックによれば所要時間は20分というけれど、もう少しかかった感じ。ともあれ、バスはどこまで乗っても15元。夫の隣に乗ったおばちゃんが、私と席を替わってやろうかと言ってくれる。「もう、30年も一緒ですから今更、ほほほほほ~」と日本なら言うんだけど、にっこり笑って「不要、ぷーやお」って感じか。夫、三峡老街と書いた紙切れを見せると、おばちゃんはうなづいてくれて、同じ停留所で降りた後も「あっちだからね」と指さしてくれた。
 
後でガイドブックの地図を見てみたら、川という大きな目標物があったのである。川を渡ったところにバス停があり、老街はその川に沿ったところにあるので、そのまま老街に行くのであれば、川の方に引き返して信号を渡り、そのまま民生街を行けばいいのであった。
 
 ガイドブックもろくに見ないおばちゃん(私)は、親切な台湾のおばちゃんが指さしてくれた方向に行った。ふと見れば、信号機に老街の表示が。なるほど!と道を渡ったところで、目の前(後で思えばこれが民生街に広がる光景にびっくらこいた。街全体が、通り全体が市場になっていたのである。壮観という言葉しか出ない。
 
台北自体、きれいになってしまって歩きやすくもあり、便利になった。毎日これでは疲れるけど、ここで買い物できるかと言われれば、毎日いいようにボられ騙される(さっきまで助けられてありがたがっていたくせに、何という言い様!)自信はあるけど。ええ、見るだけなら。ごめんなさい、見るだけなら~~~~~。
 
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 いやもう、車もバイクもばんばん来るし歩きにくいは混沌だは、那覇の市場を見た母の、「これだけの品物を一体何処の誰が買ってるの?」と言うセリフを思い出す。野菜の苗を売っている店もあったが、見事に野菜の苗だけ。花はない。通り全体が市場なのに、屋根のある小さめの市場もあり、帰りのバスの中からは別の市場も見えた。
 
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 民生街の先は行き止まりになっていて、その左側に地図があった。老街は左の奥にあるという。だがその老街は格好こそ古い街並みだが、みやげ物屋通り。すぐに飽きてしまって、途中の路地を通り抜け、番をする放し飼いの犬の横も通り抜け、路地にあるがゆえにオシャレに見える店も素通りし、生活道路に出た。目の前の丘には遊歩道の地図があり、スポーツ公園や盆栽店やらあるらしい。階段を上ってみると、雨が多いからコケむしている。道から見える空き地?にはバナナが植えてあって花も咲き小さな実も出来ているが、前回の収穫後に倒したバナナの木?がそのまんまで斜めに朽ちている。こういう風景、全くもって嫌いじゃない。
 
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 上りきると小さな広場があって隅っこにはバランス感覚を鍛えるちょっとした遊具がいくつか、バスケのゴール周辺では何人かで練習していた。高いところから老街を見ると、手前に謎の一軒屋があり、犬連れの人がそこに入っていくのが見え、犬に驚いたネコがすごいスピードで逃げていくのが見えた。その庭にも遊具が見える。
 
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 行ってみたら、謎の一軒屋は朽ち果てた染色工房の趣、通りを挟んでやはり染色関係の店があるが、ハテこれは??隅には公衆トイレが設置してあったから、これはこれで老街の趣向の一部?そこからまた路地に入り、老街を歩く。そう言えば前回来たときも雨だったんだよねー。寒かったんだよねー、と徐々に記憶を取り戻しかけた目の前に立派な寺が出現!!ああこのこれでもかとばかりに隙間の無い彫刻、覚えがある!!(後で思えばコレこそが台湾で最も美しい彫刻を誇るという清水祖師廟だったわけだが。)
 
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 バス通りに帰るべく、そのまま元の通りに出た。通りの右側にはすっかり土地に根付いた感のある中国菓子屋があって。披露宴の引き出物に使われるという、丸くてでっかいゴマだらけの月餅、他におまんじゅうも買う。ちょっとチャレンジャーなカレーまんじゅうも置いてあって、甘いカレー味だったらどうなるのかと思えば、買えない。もしかして自分にはまだ自由な気持ちが足りないのだろうか。
 
 通りを渡ったところで、今度は胡椒餅の屋台発見!胡椒餅はピザとかナンみたいに石釜の中でゆっくりと焼かれるが、それが今、まさに焼き始めるところだった。当然のことながら、「ちょっと待っててねー」と言われる。待つ。待つ。待つ。一人やってきて私に何か言ったが、日本語で「もう少しみたいー」と答えるしかない。多分相手も「それじゃ仕方ないなー、待つか。」と中国語で思考し、そしてまた一人がやってきた。
 
釜や他の用具を置いている場所は、車半分にも満たない。屋台をやってるお兄さんは、胡椒餅の皮のクズを丁寧に掃除しながら、焼きあがるのを待っている。結構時間がかかる。寒いし。出来たてのものを1つ買うが、他の人はもっと買っていた。お昼にするのかも。
 
胡椒餅やまんじゅうやら持ってバス停に立つと、すぐに西門行きのバスがやってきた。よしよし。台北のバスは乗るときにお金を支払うのと、降りるときに支払うのと2種類あるらしい。見回せば車内の表示板にはちゃんと下車、上車いずれかに明かりがともっていて、その通りにお財布を出せばいいわけだが、最終的に15元支払えばなんでもよろしい??
 
 川を渡ると右がわには真っ黒いテントで作った中にこうこうとライトがともる市場があり、左を振り返ると雲もつきやぶりそうな高層マンションの群れがあり。他には家庭菜園みたいな小さい畑がいくつもあったり、大学や錦鯉を売る店の看板があったり。バスはいいなあ、これがコミュニティバスだったらもっと面白いんだろうけど、そしたら西門までは運んでくれないからなあ。
 
 そこそこ時間はかかったが長い時間ではなく、15元で西門到着。西門のビルの中に立つと、さっきまでぶっ倒れたバナナを見てたのが嘘のよう。陽明山からバスで台北まで下りてきたときにも、同じような感じで、田舎の山だなーと思ううちに別荘があちこちにあるなーと思ううちに何か色々立ち並んできたなーと思ううちに、あれっ、もう大都市の台北ではないですか!という。
 
 胡椒餅はかなり冷めてしまったが、これ以上冷めないうちに対応する必要がある。というわけで、セブンイレブンに入るのである。2階がイートインになっているので1階で御茶園のお茶(いやあ本当に美味い!)とおにぎり(ほぼ日本と同じ内容なんだな、これが)を買って2階でいただく。雨風防げてありがたい。これが夏なら冷房入ってるはずで、なおありがたいはず。
 
 ところで、途中大理とかいうところを通ったのだが。「大理老店 45年」という看板を掲げた食堂?を見た。それはシャッターはあってもドアはない、ふきっさらしにテーブルとイスを簡単に並べた店だった。客や店主、家族の45年間のドラマを思うとなんかもう、わああああああっと叫んでそのへん1周しちゃいそうなくらいの看板と店の関係だった。
 
 季節がよければ、入って食べてもいい。きれいなトイレがあればなおのこと。日本だったら、こういう店がヘタにきれいにしたり店を立派にすると味が変わっただのナンだのと言われる気もする。だがここは台湾、出来れば店主は郊外に構えた豪邸から地下鉄で通勤してこの店をやってほしい・・。でないとこっちが走らなきゃならない。
 
 ホテルに帰る。途中、三越に寄ってお土産を買って帰るつもりだったのに、気がつくとホテルに帰っていた。この道はおかしいと思っていたら、夫のやつがそのままホテルに帰るつもりでいたのである。「あんたねっ、お菓子持ってレストランに行く気?はあ?明日だと思ってた?明日は荷物預けてから飛行機の時間まで遊ぶはずでしょ!どこでもう一回パッキングしなおすつもり?」とまあ1度はありますね、こういうこと。
 
 三越横の四川料理屋をホテルで予約してもらい、あらためて三越に行く。大きめの手帳サイズの月餅を選ぶが、消費期限が1週間ほどと割りと近い。アーモンドプードルの入ったのは2つ、ココナツ(椰子と書いてあるのは1つしか在庫がなく。試食は大きいが、ツメが甘い気がする。旧正月春節が近いので各店には手土産にするためのお菓子が売られているが、どれもこれも箱ばかりが立派で、旅行者には向かない。その点、商品の大きさが箱の大きさであるこれは、ちょうど良かった。
 
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 問題は試食で、品物を選び終えた後の私たちは、腹八分目の気分になっていた。これだから試食と夕食の間は空けなければいけないのに!だが、四川料理の店の料理は、何故かいまいちだった。笑ったのが豚肉の燻製と青菜の炒めもので、この燻製がずーっと前に夫が作ったイノシシの燻製とそっくりときてる。台湾に来てる気がしない・・・ そんなわけでもないが写真もない。
 
 これなら無理に食べなくてもいっか、というわけで2皿食べて店を出た。後はおでんでも買って部屋でのんびり飲もうやという話になる。コンビニのおでん関東炊きは品切れっぽかったが、なんとか容器から拾いあげて持ち帰り、部屋で食べてみると。随分太いエリンギだなと思っていたものはエリンギの足に詰め物がされていたと判明、ほかの練り物も魚ではなく肉だったりして、もはやおでんを超えていた。もしかすると日本は既に負けているのかもしれなかった。明日はもう帰る。