近場への旅を作る 河口湖へ

LX80 Onstep化はいろいろとあってあまり進展なし。
私がドタバタしている間、妻の日帰りひとり旅の記録。
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 昨年から、意識して旅に出ることにした。
いやあんたはダンナと一緒に毎年旅に出ているではないかと言われそうだがそうではなく、自分ひとりで行って来る旅である。

 まずはメジャーな花の名所を訪ねてみるかと思い、国営ひたち海浜公園に行ってみた。春はネモフィラ、秋はコキアで有名である。さすが国営公園というか、とにかく広かった。失礼ながらネモフィラはところどころハゲてもいたし、全部がネモフィラとか全部が芝桜とか、花で絵を描くマスゲームみたいなのとか私は好きではないことを思い出して帰ってきた。なんじゃそりゃ。

 その国営ひたち海浜公園では、「ええ、ツアーですよもちろん。自分じゃここまでたどり着けないもの!」という言葉も聞いた。どこから来たのかとも思ったが、「うちですか?うちはxxです。」ってそれうちから30分の場所。そこからなら路線情報とサイフさえあればたどり着けるはず、と内心思ったけどそれは余計なお世話だし。
 
 フジの花で有名なあしかがフラワーパークにも行った。雨の中、フジは素晴らしかったが植栽の上手さがそれについてきた。帰りの電車に乗ろうとしたら、降りてきたドレッドヘアの黒人男性の前のファスナーが開いているのを発見。教えてあげたくとも、お互いに人ごみに流されてしまって、出来ず。おかげであしかがフラワーパークといえば前全開のドレッドヘアのおっさんとフジの花だ。
 
 ツアーを探してお金を添えて申し込み、集合時間に集合場所に赴くくらいなら、自分で路線情報ググって適当な時間に家を出る方が楽なのではないかと思う私はお察し通り友達少ない。それからツアーでエジプトに行くことになり、なるほどツアーはツアーで便利なものだと知ったが、一人で行く方が楽だという気持ちは変わらなかった。

 それからまた桜の咲く季節が巡ってきた。
とりあえず河口湖に行こうと考えた。昔何かで知った久保田一竹美術館があるからである。久保田一竹はお高い、いえ、美しいので有名な辻が花の技法を今に蘇らせた人であり、そのときはたんにきれいなものを見たいと思ったのだ。

 しかし、色々あっていったん忘れ、久保田の名前も思い出せない始末。竹と着物を手がかりに「呉竹はふでペンだし、筮竹は占いだし??」と着物好きな友人にメール、「久保田一竹」と教えてもらった。問題は彼女の「公共交通機関で行くには難しかったような?桜の季節は混むと思うし」という一言だったが、来る人を拒むような美術館あっていいわけないじゃん!とググってみる。
 
 まずはヤフーの路線情報だが、うちからだといやに遠回りになり、乗り換えだらけ。
そこで高速バスに変更。東名高速のバス停はうちから徒歩圏内にあり、新宿やら御殿場アウトレットやらならバスを利用しているので馴染みがある。ちなみに御殿場まで1時間半くらい。そして探してみると本数は少ないものの特急バスがあり御殿場から1時間で河口湖に着くとのこと。
 
 ほかのバス便はないかと探したら朝7時半に近くの駅から河口湖行きの直行バスが出ていることが判明、片道1800円。どうやらこれが一番安くて便利そう。帰りのバスは河口湖を5時すぎに出て、帰って来るのは8時すぎ。しかしそんな時間まで河口湖にいなくても新宿を経由して帰ってもいいし、直行便にこだわらなければ早めに日帰りが可能。
 
 現地には周遊バスが走っており路線は3つ、1500円のチケットを買えば乗り降り自由。同じ周遊バスの路線には「猫のダヤン」で有名な池田あきこの美術館もあり、きれいなものといえば「山梨宝石博物館」なるものもあるし、別路線だが大好きな道の駅に足を運べる路線もあった。
 
 しかしそのなるさわ道の駅行きのバスは本数が少なく、午後1時すぎに河口湖駅を出て1時間半かけて到着し、帰りのバスまで2時間滞在、それから同じ道を1時間半かけて河口湖駅に帰ってきて、結局行きのバスと同じルートで帰ることになり、そのバスまでには35分の待ち合わせ。そんな時間を往復するのも大変だし、泊まるならともかく遅くなるのもイヤだし、ここはなんとか一筆書きに帰って来るルートはないものか?

 それでも一応そのつもりで次はと天気を見たら、河口湖の最高気温は11℃だった。新鮮な農産物とか想像していたが、11℃じゃ農産物は無理。道の駅は次回にすることにして、そしたら帰りのバスは何も5時まで待つことはないし、同じ道を帰る必要もない。、富士急行線で大月を回ることもできるけど、日帰りであることを思えば新宿までバスで直行したい。

 富士五湖回遊特急というのもあり、本数は少ないが午後3時すぎに乗れば午後4時半に立川に到着できることが判明、南武線に乗り換えて・・いやこれも結構な大回りとなってしまうし、夕方のラッシュアワーに関係するのはちょっと。←ヤワなやつ
 
 そんなこんなで旅の当日。調べていたころの最高気温は11℃だったが、その日の最高気温は5℃の予定で、なおかつ曇り、夕方からは雨か雪になる予定だった。5℃の日の外出支度はといえば、ヒートテックの薄いシャツに厚めのヒートテックタートルネック、その上にウルトラライトダウンを重ねてその上からコート。下半身にはもちろんレギンスを仕込んだうえにパンツだ。手袋も持って行く。
 
 たまプラーザ駅から出るバスはがら空き、窓外の桜は散りかけていた。稜線を描くのがマンションから山になると新緑が美しく、本などは読んでいられない。ほくほくと見続けるうちに東名御殿場をすぎ、富士に向かって登っていくことになる。そのころからバスの中が冷え始め、外には明らかに雪が舞うようになった。平地では散り始めている桜が咲き始めの桜となり、新緑は固く閉じていき季節は後戻りしていく。河口湖は標高848mの場所にあるのだ。
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 到着は9時40分頃だった。気温2℃、雪。駅でコーヒーでも飲んで一休みと思ったが、スーツケースやリュックを携えた沢山の観光客で足の踏み場もない。なんでこんなに沢山お客さんがいるの!?それも外国人ばっかし!いやそれは認識不足で寿司やらラーメンやら流行り始める前から富士山は世界的に有名だったのである。てことはもしかしてこの人たちは日本旅行の初心者なわけですか。
 
 周遊バスのチケット売り場にも列が出来ていた。しかし予め見た料金表によれば、私はそこに並ぶには及ばない。お姉さんが英語で叫んでいるレッドラインのバスの列の最後尾に並ぶ。結構な混み具合だ。途中かちかち山ロープウェイというのがあり、外国人カップルの男の子の方が「日本のおとぎ話に出てくる山だよ」と教えていた。
 
 周遊バスの運転手がやる気のなさそうな英語でアナウンスするのがカワイイ。車内はほぼ外国人、そして下手すると私が最高齢。バスは河口湖畔をこきざみに停まりながら走る。猿回しを見せる施設があり、その向かいには池田あきこ博物館がある。その次のバス停が久保田一竹美術館。
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 おどろおどろしい門。その向こうには高低差を利用した庭園の入り口が見える。滝が設えてあり、落ち葉で一杯な地面には世界観を邪魔する余計な花はない。せせらぎにはわさびが植えられていて、小さな白い花をつけていた。展示室は別棟にあり、そこに行くには琉球石灰岩で作られた石庭を通る。展示室はそう広くないが、樹齢千年を超えるヒノキを組んで作られており、そこに彼の着物がかけられている。室内は撮影禁止。
 
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 その日はアメリカ人らしきツアー客が来ていて、ビューティフル・ガーデン!なぞと言い交していたが、流れの中の植物が本物のワサビであるとは彼らが知る由もない。つうか下手すると日本人もわからないかもしれない。根茎は見ることがあっても葉や花はあまりおなじみではないから。
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 久保田一竹はもう亡くなっており、この美意識はいつまでこのまま保つものなのかと考えさせられた。しかも私がここでわざわざ買うものといえば、夫の大好きな干しブドウなのである。ちなみにその干しブドウはチリ産のぶどうを長野県で加工したもの(どんな状態でチリからもってきて、長野でどう加工したのだろう??)で、いやに美味いがここで売る意味がわからない。
 
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 池田あきこ 河口湖木の花美術館を目指す。猫のダヤンを描いた人である。久保田一竹同様、知る人ぞ知るが知らない人は知らない。美術館と言ったって入場料500円、それならとそちらは無視をきめこんでショップの方に浸る。あれもこれもカワイイ、でも少しばかりお安くなくて、おかげで色々買いすぎることがなくて助かる・・。なんだそりゃ。またここにもさっきの干しブドウが売られていて、評判悪くないらしい。川崎でも同じものを買いに行ったら既に売り切れていたくらいで、今となれば2つ3つ買っておけばよかった。
 
 と、ここで私はやっと地図を発見。それはワインセラーが作った地図で、河口湖の主要観光施設、宿泊施設が1枚の中に一目でわかるよう記されていた。パソコンだけで現地事情を調べようとしたら、絶対不可能な情報がここにある。道の駅なるさわに温泉があるらしいのも知らなかったが、大石プチペンション村というのも初めて知った。
 
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 その宿泊施設の名前も「ローザンヌ」に「ウッドストック」に「モーニングサラダ」に「プレーリードッグ」にとそういう世界観を体現した建物が30件も軒を連ねているというわけで、ちょっと見てみたい。

 もともとペンションとは年金という意味でヨーロッパでは年金暮らしの老夫婦がのんびりと必要にして最小限で旅行出来るような宿泊施設のはずなのに、日本では全くそうではない・・ 。そんじゃオマエは泊まりたいのかと言われればいやこの年になったら温泉旅館の安いのでいいです、高いのならなお可ですとしか答えられないわけで、つまりこのペンション村としては大迷惑か。それでも来る前にこういうのの存在を知っていたなら、無理にでも足を運び、お茶飲みにでも立ち寄ろうとしたはずだった。
 
 この地図を先に入手していたら、もっといい季節に行くことにして、一泊して道の駅にも行けばペンション村にも行くことになるはずだし、ワインセラーでワインしばいちゃうかもしれないし、忍野八海を回ることを画策するかもしれない。
 
 ヘンな話で、そうなるとちまちました宝石博物館なんかどうでも良くなってしまった。
反対方向のバスに乗り、駅を目指す。ロープウェイの停留所では中国人親子が降りて行ったし、結構な数の乗降客がいた。横に立ってどこだかわからない国の言葉でしゃべっていた女の子がふと「レスト・・ラン」と窓外の看板のカタカナを読む。えらい!それで合ってますよと心の中で拍手を贈呈する。 
 
 ほんの3時間の滞在で河口湖を後にする。だって寒いし。帰りは新宿経由で帰ろうというわけで京王バスに乗った。駅前には「ほうとう不動」なる店があって行列になっていた。ほうとうの看板はあちこちにあって、なんというか沖縄における沖縄そばみたい。もっとも沖縄そばの場合は米軍の小麦粉から作られたわけなんで、ほうとうみたいな歴史ある食べ物??と一緒にしていいのかどうかはわからないが。
 
 行きは東名高速を、帰りは中央自動車道をゆく。自然や集落の眺めは東名の方が上だが府中の競馬場が見えたりするとあれはあれでカッコいい。途中深大寺のバス停というのがあり、老夫婦が草の中の階段を降りて日常の中に帰って行った。うちの近くにある東名のバス停もそんな感じで、都市(新宿行きと東京行きがある)から自然から、唐突に日常に戻されてしまう不思議感がある。(でも本数が少ないのが残念~。)
 
 帰ってから、JTBの旅行パンフレットを集めた冊子をチェックしてみた。そしたら国営ひたち海浜公園あしかがフラワーパークを日帰りではしごするというツアーが募集されていた。これがなんと、9000円しない。一人旅の私は海浜公園では帰りのバスを地味に待ち続けたし、日を替えてのあしかがフラワーパークでは雨の中帰りの電車が混み混みだったのを思い出す。あれをシートが確保されたうえで1日で2か所回れるのならば全然お得ではないか!!
 
 河口湖や久保田一竹美術館へのツアーは最初から調べなかったがも、これからはツアーの有無や内容についても調べた方がいいのかもしれない。自分ひとりで行けるのならば逆に無理に自分ひとりであることにこだわる必要はなく、あえてツアーに潜り込むことも出来るはずである。