翌朝。焼き鮭や温泉卵が並ぶ普通の朝食の中に、郷土料理だという、いまどき貴重な秋刀魚の身をぐちゃぐちゃにして甘めの味噌と一緒に煮たものが出た。温かいご飯にかけてこれまたぐちゃぐちゃに混ぜて食べたら美味しいに決まっている、前夜の煮魚ふうの料理だった。おばあちゃんの家に来てるみたいな一品。こういうの、嫌いじゃない。これまた余談だが BGM は朝ドラ集、当然「あまちゃん」も入っていた。例によってスマホを忘れて写真がない。ほんとうにインスタ映えしない夫婦。
ホテルのお勘定は、GoTo の割引もあり、えっと思うリーズナブルだった。そのうえ地域限定クーポンも一人二千円分もらえた。女将が「使えるのは今日と明日だけですよ」と念を押してくれる。タクシーにも使えるというが、二人分で四千円、ハテここではどこまで行けるのだろう。このあたりで有名なのはハワイアンズだけではなくアクアマリン福島 なる立派な水族館やララミュウとかいう、道の駅ならぬ海の駅だってある。話のタネとしては映画「フラガール」以外に「超高速!参勤交代」の舞台となった「湯長谷(ゆながや)藩」も、ここなのだ。十分揃っていると言っていいのでは?
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そのうえで湯元温泉では温泉宿の女将たちを集めて「フラ女将」として売り出しているそうで、その肖像はTシャツとかレトルトカレーになっている。宿にあった目をひくパンフレットによれば私たちが泊まった宿の女将は生まれも育ちも湯本温泉、「身体の中に湯が流れてますの」と主張していた。こういうのも、嫌いじゃない・・・。
結局、タクシー呼んで化石と石炭の博物館を目指す。迎車料金は無く、ワンメーターで開館時刻9時前に到着。タクシー料金はクーポンで支払う。
入館料もクーポンだ。入るとフタバサウルスが出迎える。種小名はスズキイときて、地元の高校生が発見したという。フタバで出土したからフタバサウルス。スズキイとは、鈴木君の、という意味ですね。和名はフタバスズキリュウ。地元の小学生たちも学習にきていた。
まあそれからは驚きの連続、恐竜といえば福井だろ、くらいの認識だった私のバカ!ってくらい面白い博物館だった。三葉虫が100cmに及ぶのがあるなんて気持ち悪っ!とか、双葉あたりから出土する恐竜の化石の種類の豊富さとか、糞の化石なんてあり?
ペンギン属の化石は骨格見ただけでもこれはカワイイやつだとわかるのにも驚く。
石炭関係の展示も驚きの連続、石炭と温泉とは相容れずなんて知らなかった。石炭掘るのに温泉は邪魔、そりゃそうか掘ってるときに熱い温泉噴き出したら大変だもんね。だから温泉は地下水と一緒にせっせと捨てて地中では暑さをしのぐために鉱夫は水風呂に入ってたんである。捨てまくった結果、温泉はいったん枯渇さえもした。
常磐炭鉱の石炭は首都に近いゆえに重宝されたが地層の褶曲も激しいから(一方で化石が地上表面に出土するわけか)、お終いには地中600mまで掘り進むことになった。そこまでして石炭掘っていたのは125年間。結局、もっと安くて効率的なエネルギーに代替されるに至ったが、アメリカやドイツでは今なおエネルギー全体の半分を石炭が占めている。てことは、あちらさんではモノが高品位にして簡単にいいのが掘れるという意味なのか。なんか、ずるいんじゃない・・・? 福島の皆さんに謝れ!!
石炭が左前になり、これじゃダメだってんで捨てていた温泉をまた掘り返して、今度は常磐ハワイアンセンターになるわけだが。震災によってかつての坑道はどうなっておるのだろ。まあとにかくわかりやすくなお、ためになりすぎるほどの展示であった。すっごくお利巧になった気がする。博物館のHPでは設立の目的のひとつとして以下のように記している。
○石炭と化石の複合展示により、博物館法外の施設ではあるが、学術的裏付けを持つ展示とともに、観光誘客に十分対応できる「学術と観光」の両面を有するユニークな施設。
博物館法ってのがあるんだねえ、と思うほどにモノ知らずの私だが、点の知識が次々に結ばれて行って線になっていく楽しさに、また行ってじっくりと見たいと思うに至った。というのは夫が10時23分のスーパーひたちに乗るつもり満々で、さっさと進んで行ってしまうからである。次はこいつを抜きにして一人で行ってやろうかしら。で、駅までのタクシー代もクーポンで支払った。
博物館のショップにはパックされた本物のお魚とかのお土産ものもあり、フラ女将のカレーも置いてあった。湯元温泉は不思議に土産物屋が見当たらないところで、ここは貴重な場所なのである。しかし駅にもあるだろうと私はそのままタクシーに乗ってしまった。駅には小さなキオスクしかなく、でも何とかお土産調達、このままでは品川駅で買うことになる!と焦った。このお土産もクーポンで支払い、全部使い切った。これでいいのだろうかと思いつつも。
夫の努力と私のあきらめにより、めでたく10時23分発のスーパーひたちに乗車、2時間ちょいで品川、電車を乗り継いで駅からタクシーに乗り、午後2時すぎには家に到着。夫によれば2日めの歩数は二千歩で済んだそうである。
夫に感想を聞けば、お刺身が小さいとのこと。特別ここの刺身が小さかったわけではなく、普通の小ささだった。もっとも、私もかねてより旅館飯とか和定食の刺身は何故あんなにちまっとしてるのかと不思議であった。対応策としては船持ってる民宿とかなら刺身は大きくなるのかもしれないが、民宿だと部屋からトイレがなくなる可能性がある。
バイキングだと刺身の量とともに歩数を稼いでしまうし、刺身の品質としてはいかがなものか。高級な宿なら刺身も大きいとも限らず、二人で舩盛りを別注というのもアホらしい。思えば湯治宿で、食事は隣にある居酒屋でお好きなものをお召し上がりくださいというのがあったが。
「そんな感じで、宿はビジネスホテルでよくて、近くのお店に行けばいいのではないか」と夫は言う。それでは温泉はどうなるのか、宿に到着したら浴衣に着替えてしまってまずは広いお風呂で身体をゆるめて、という楽しみは?
・・・しばらくモメそうである。どなたかいいところをご存じなら教えてください。
お終い