ミュヘン、フィレンツェ、ピサのちミラノのちミュンヘン その6

フィレンツェ 2日目
 
 夏場の旅らしく、朝一番でとにかく洗濯しまくった。洗濯物干しとして、日本から持って来たクリーニング店のプラスチック製ハンガーが大活躍した。問題はホテルの部屋があまり清潔でないことで、窓枠の取っ手などにハンガーをかける場合、周囲を改めないと洗濯が二度手間になることだった。
 
 この日は、夫の希望でガリレオ博物館に行く。大体の方向目指して歩いていくと、アルノー川に出て、左にはヴェッキオ橋が見えた。一目でそれとわかるのは、ディズニー・シーにあるアレだからである。知人はここでスリにあって、フィレンツェの夜が台無しになったらしい。私たちも気をつけなければならない。
 
 ガリレオ博物館の手前にはかの有名なウフィツィ美術館もあって、アルノー川沿いの通りはバッグ屋だのみやげ物屋だのが並んでいる。一体フィレンツェでは年間どれだけの数のバッグが売れているのだろう。グッチの本店もあればプラダのアウトレットもあるらしい。だが、ふと気がつけば、我々がフィレンツェにいるのはたった1日なのであった。
 
その地に立つまで私はフィレンツェに2泊しかしないという意味を意識していなかった。夫は夫で、フィレンツェで見たいのはガリレオ博物館だけだから丸1日あれば十分、街中世界遺産みたいなところでは危なくて仕方ないから、用事がすんだらさっさと退散するのがよろしい!という考えだったらしい。夫は一部正しいが、ほかのところが大間違いの人だった。
 
 ガリレオ博物館はこじんまりとして、なお涼しかった。そしてここで私にコペルニクス的展開?が訪れることになる。夫の説明を聞きながら、私はどうやらガリレオダ・ヴィンチをごっちゃまぜにしていたことに気がついたのである!!どんだけバカなんだと思われるかもしれないが、是非、お隣のおばちゃんに聞いてみて欲しい。どっちにどういう功績があるのかを。
 
 大体万有引力といえばアイザック・ニュートンだよね? ニュートンてイギリス人だよね?あれ?なんでイギリス人なのに「アイザック」なの? アイザック・アシモフみたくアイザックはロシア人の名前ではないの? 夫曰く、アイザックとは旧約聖書のイサクからきていて・・・後略
 
 まあそんなわけでガリレオ博物館はとてもためになった。なんでダ・ヴィンチが出てきたのかといえば科学博物館だからか、ダ・ヴィンチの例の人体の図が展示されてたからで、余計に混乱したのである。ガリレオといいダ・ヴィンチといい、オシャレして女の人に声をかける以外のこともするイタリア人もいるのだなあと言ったらイタリア人に怒られるだろうか。
 
世に有名なダ・ヴィンチの絵はおじいさんであるが、生まれたときからそうだったわけではない。ガリレオダ・ヴィンチも実はすっごいオシャレさんで女ったらしで、そのうえで偉業をなしとげたのだろうか? 沈香焚かず屁もひらずというが、両方盛んだったならなおすごい・・・ ここまですごいと、臭い???
 
 大きくとられた窓からアルノー川対岸を眺める。松の木が見える。私にとってイタリアといえばこの松と糸杉で、ローマの松の格好良さは部屋の壁に描きたいくらいである。描ければだけれど。汚れた窓を通して松やら掃除に熱心ではない街並みを眺めると、今、自分はイタリアにいるんだなーという実感がわいてくる。
 
 さて、この後はどうするか。夫はどこでもいいと言っている。ガイドブックを眺めてみれば、かのヴェッキオ橋を渡ったところには世界遺産のボーボリ庭園があった。ここに行くぞ!
というわけでヴェッキオ橋を渡る。橋の両側には建物がしつらえてあり、それはぜ~んぶ宝飾品の店。世界中から来た観光客(のダンナ)達が記念にと奥方におねだりされるところなわけだ。しかし、こんなところで油を売ってる場合ではない。庭を見に行かねば。
 
 庭園までの道の両側は観光客向けのお店が並んでいる。洋服、バッグ、靴。楽しそうだけど、本当にこんなところで油を売ってる場合、と思いかけて真実に気がつく。逆だ、バカンスとは油を売りにいくものなのだ!!そしてたどりついたボーボリ庭園はといえば、広かった。階段や坂道が続き、半日がかりでも足りないとはガイドブックの言葉だが、その通り!
 
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もしかして、うちの田舎の山でもちゃんとした道さえ作れば庭園ということになるのではと思われる自然の森そのものの区域から、温室や糸杉の大通りに噴水に洞窟。正直、殆ど見ていない。暑いし、坂道でくたびれたし。イタリア庭園のモデルケースとなり、ひいてはヨーロッパの庭園造営に大きな影響を・・・と言うけれど、見たいのは庭園ではなく植物園だったことに気がついたのである。バカだね~、私。そしてガイドブックには庭園は載っていても植物園は載っていなかった。
 
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 庭園の中では、陶磁器博物館が面白かった。陶磁器ではなく、その小さな庭(バラと芍薬が植えられていて、花は殆ど終わっていたがバラの香りがすごかった!)と背景に広がるブドウとオリーブの木で構成された田園風景、真下にある普通の家が面白かったのである。
 
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 庭園を出て、そのへんでランチをしようという話になる。この旅行では初めてのランチである。朝食を沢山食べので、お昼は必要ないと思っていたが、何故そうなったのか?。パンとヨーグルトが美味しくなかったからか? それともゆで卵が固くゆだりすぎていて、卵の空洞が不安になるほど大きくて、そのうえ黄身が片寄っていたからだろうか?まあ、何でもよろしい。
 
 結局、軽くサラダをいただいてまた歩き出す。せっかくフィレンツェにいるのに、明日からはピサに行くことになっている。自分たちの人並でなさ加減に、段々イラついてくる。が、今更遅い。旅程をチェックしない私がいけない。せめて何か買ってやれ~ と世間を見回す。世の中はバーゲンだ。とりあえず妹へのお土産に、夏らしい白いバッグを買う。もちろん、ぺたんこに畳める素材のもの。これならスーツケースに入る。自分にもひとつ。
 
 洋服を買おうとするが、どれも大きい。こちらの女たちは、出すぎている。前と後ろに。顔のでかい棒っきれのような女がいるなあと思ったら、鏡に映った自分だったこともある。普通のおばさんとして暮すなら日本ではこれで十分だし、実際ああなってしまったらもう日本には帰れない。180cmくらいの身長に、足は28cmくらいでバストがFカップで顔だけ純正日本人がいたら日本では暮らせないし、私だって友達になれるかどうか。
 
結局、でっかい犬が寝転んでいるマダムな洋服屋さんに入ったら、サイズSでも大きかった。いや、大きいのではない。ここでは私が「足りない」のである。 くくうううう・・・。
 
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 ウフィツィ美術館の前を通ると、長蛇の列だった。帰ってからの知人の話によると、シーズンともなれば個人旅行客は朝4時から並ぶことになるらしい。団体から先に入れていくので、いつまで経っても入れないとか。 歳暮死蔵ではなく、聖母子像の名画と聞けばどうせウフィツィにあるんだろうなあと自動的に思うほどの美術館なのに、そういう運営の仕方でいいのだろうか。
 
途中、自然史博物館らしきところに通りかかった。受付もいないし、人気もなく、不思議なところだった。そして、入り口にある地図で、植物園発見!これだから1日ではダメなのだ。当然、大聖堂も長蛇の列だった。このドゥオモの美しさと言ったら。フィレンツェで美しいものでお腹一杯になるのは3日以上かかるだろう。街の事情がわかってきて、アウトレットやスーパーにたどりつくまでに1週間くらい?なのに、ガリレオ博物館だけのために1日 ! すがすがしいな、うちの夫。
 
 大聖堂近くのお菓子屋さんに入る。何か面白いものでもあればと思ったのだが、面白さや美しさは中途半端で、高い。この暑さでチョコレート買っても仕方ないし、ナッツを大量に使ったお菓子などはこの値段でこれだけ?? って感じ。アーモンドの粉で作られたマジパンも売られていたが、出来は昔、ウィーンで買ったものの方がはるかに良く、中国人観光客二人組み(個人旅行してるくらいだから、偉いさんのお子様?もいたが、悩んだ末に買うのをやめていた。そうだろうとも。
 
 部屋に帰ったら、十分疲れていた。というわけで、昼寝をする。明日はピサに行く。夕飯はと聞けば、夫は行ってみたい店があるという。私は、昨日と同じでいいじゃないかと思うのだが。開店は7時半なので、部屋でだらけて待つ。日本でなら夕食は終わっている時間だが、日が長く、外は明るいのでそれに助けられてというか騙され、逆に昼酒飲みに行く気分。暗い中歩くよりは全然いいけれど。
 
地下にあるレストランの前まで行ったら、数人が待っていた。開店と共に予約のある人から入れていく。我々は予約していない。だが、入れてくれるらしい。断られている人もいる。この差は何? こういう時用のイッセイ・ミヤケのお洋服のおかげか? 階段を下りていくと、あちこちから「ボナセーラ!」の声がかかり、待ち構えてるマダムがにっこり笑って握手をすることになる。私はこういうのっていまいち苦手・・・。
 
席の担当は、物腰からしゃべり方から、見るからにカマだった。「アグリー・ベティ」に出てくる男の編集者に髪型までそっくり! 普段そうそう出会うことのない人なので、ついつい見てしまう。他所の席では、腰をくねっとひねり家具に半ば寄りかかり、左手をひらひらさせながらメニューの説明なんかしてる。カマ認定(ごめんと一応書いておこう。)した後は、彼の言葉は男女別のない英語なのに頭の中で自動的にカマ語に変換されてしまう。
 
 「アーティチョークのサラダ?あらごめんなさいね、それはちょっと季節外れなの。だからね、メニューの間違なのよ。」とかなんとか。やがて隣の席に家族連れがやってくると、Where are you from ?「どこからいらしたの?」になり、 What’s your name?が「お名前は?」に聞こえ That’s good ! が、「んま、ステキ!」というように変換される。
 
 隣の席の家族連れはイタリア系アメリカ人で、子供たちを連れてイタリアを見せに来たらしい。私の席から見えたのは男の子で、10歳くらいか、なのに指をしゃぶっていた。こちらを見たときに真似して指しゃぶりをしてみせたらあわててやめた(面白!)。名前はダビデだそうで、前髪とか顔のつくりとか、かの彫像に似ていて笑える。けど、名づけるだけでその通りの人間になるなら何の苦労もない。ダビデダビデっぽいのは偶然。というか、ダビデっぽいのに指しゃぶりしている方が真実。そしてダビデ像といえばあの。 ・・・いや、何でもない。
 
 夫の方はといえば、一人で来ていた中国人の若者が巨大なTボーンステーキと格闘してるのを見ていた。
ここで何を食べたかは覚えていない。周囲の人間ばかりを見ていた。ダビデの向こう側のカップルの女性の方が、滝川クリステルそっくり!聖母みたいな顔した女はごろごろしているが、ああいうのは少ない。ああいう美女だからこんなお店に連れてきてもらえるのかな?
 
 ふと見たら、サービスする皆さんは、胸に名札をつけていた。通りかかった彼は、Rocco. ロッコ、って小説とか映画で出てきた感じがする。本来ロベルトとかいう名前があって、愛称のようなものかもしれない。けど、1皿2000円もする店で、名札に「ちーちゃん」とか書くか?? 謎だ。かのカマの人はと聞いたら「ファビオって書いてあったよ~」と夫。ファビオか。漢字で書いたらどうなるのか。華美於? あ、ちなみにレオナルドは仔獅子ね。
 
 帰りがけに「グラーチェ、ファビオ。」と声をかけたら彼はハトが豆鉄砲くらったような顔をしていた。ちょっとだけ勝った?店のマダムは、記念に何かくれた。店の絵がついた、多分エプロンかなんかだろう。まだ開けてない。なんか、こういうのをおもてなしって言うんだっけかなあと未だに思っちゃうし、だったら私はおもてなしは下手な方だなー。


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ガリレオ博物館の収蔵品からいくつか。


ガリレオ木星などを観測した望遠鏡。

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ガリレオの時代、それ以降の屈折望遠鏡
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反射望遠鏡など。
木目細工が美しい。
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