中国広東省 深セン4 大鵬所城へ

 
 その日は朝から不穏な空気に包まれていた。
朝食のために買った昨日果物群が、外れまくったのである。正確に言えば外れたのはブドウとオレンジだけだったが、ブドウはパックの中でぷりぷりしていたにも関わらず、洗って口に入れたらカビ臭かった。オレンジはと言えば、それなりに熟しているように見えたがろくな汁気がなく、全く味がない。こういう外れ方は生まれて初めてだった。夫は「ざんねんなくだもの図鑑だ!」と言った。
 
 ブドウはもはや毒の領域に入っていたが、オレンジの方は??立派な姿をしているというのに、あれで少しは何か栄養というものが入っているのだろうか、みたいな。原種であればひねこびた形をしていて皮は固く味は柑橘類の味の中の何か都合の悪い部分だけが突出しているに違いないと思うけど、色と形、大きさは完璧で味と汁気がなかった。
 
 仕方なく残っていたメロンパンなど出してみた。同じメロンパンでも外見の違うのがあるなーと思いつつ適当に選んだソレはあんこが入っていた。そのあんこはかなり少なくて、しかも偏って入っていた。あんこまでは期待してなかったので、それはそれでオマケみたいなものかもしれない。だが、入れるなら入れるできちんと存在して欲しかった。
 
 失意のなか、「本日は、古街に行く!」と夫は言った。「大鵬所城」とい古い漁村の街が郊外に残っていて、特急バスで1時間半ほどで行けるらしい。見れば老街というのは地下鉄駅の名前にもあって、バスなんぞ乗らずにそっちにしとけばいいじゃん、と言ったが行くと言って聞かない。で、ホテルの目の前のバスセンターにいけば、窓口でチケットを買う必要もなく、やってきたバスに一人10元払えばそのまま出発しちゃうのだった。
 
 バスは特急のほかに各駅停車もあって、そちらだと倍くらいの時間がかかるらしい。特急だけあって、窓外の景色はあまり面白くなかったが、やがて緑が多くなり、海が見えた。タンカー??らしき大きな輸送船が停泊していて、太いパイプが何本も横たわる、注油(ガスかも)基地みたいなのもあった。リゾートらしいホテルのようなのも見えるが、なんだかリゾートと中国人が結びつかない。
 
 そうこうするうちに1時間半。まだかいなと思ってまた30分。(途中、豚の三枚肉を入れたビニール袋を下げたおじさんが乗り込んだりした)到着した「大鵬中心」は普通の街だった。バス停の横には南大沢のアウトレット(ローカルな話ですいません)みたいなのがあり、きれいなトイレも完備してるし美食街も地下にはスーパーもあり、心休まることこのうえなく、もうこの先になんて行かなくてもいいじゃんと思うが、ここからまた乗り換えるらしい。
 
 バスはほどなくやってきて、郊外の道を進む。こぎれいなスーパーやショッピングセンターを見た後は街にも親近感がわいてきて、このあたりなら自転車で買い物が出来るし、などと住まい方まで想像してしまう。やがて海側には海鮮を謳う、海の家を豪華にしたようなレストランが見え、それからまた少ししてから目的の「大鵬所城」に到着。皆降りるのでついて行く。

正面入り口、南門、変なコスチュームの人が。
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 入り口には案内所があり、駐車場があり、トイレがあり、奥に進むとレストラン、お土産を商うお店などが古街に混在していて、建物は違うけど何かに似てると思ったら、これって川のない倉敷では?いや、温泉のない湯布院?
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メインストリートをまっすぐ行くと、北門
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城壁の中はこのように人々の生活がある。
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やがて見晴台に立ってみたら、大きな寺院が見えた。夫、「あそこまで行こう!」・・相当遠そうなんだけど、ここまで来てあんなに大きな寺院を見ないで帰るわけにもいくまい。それで歩いて行ったら案外近かった。ただ、当の寺院は最近作られたもので、古くもなんともなく、ありがたみがない。参拝する人も少ない。遠くから見るだけにしておいた方がよさそう。
 
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本殿、立派に見えるが、伽藍の柱はコンクリート建築。
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ご本尊
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 お昼は古街の周囲で食事をしようかと、めぐって見た。そこには数々の民宿があり、「本日お部屋あります」の看板が出ていた。深センから2時間に位置して、古街だけしかないように見えるここに泊まる人達がいるのが不思議に思うが、もしかすると周遊旅行する人々の宿場町なのか??
 
 化粧っけのないなりににこやかなお嬢さんがやっている小さな店を見つけた。ビーフン炒めを注文したが、これがまたきちんと辛い。外の道では首輪をした柴犬っぽい子犬が大きな枯葉にとりつき、得意そうな顔でくわえているのが見えた。
 
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 レストランや民宿の中に、小さな畑を見つけた。お店のレベルでは足りないだろうけど、一家の分くらいなら十分なような。中々な種類の野菜で、買っているのは種子か苗か。ここは南の方なのだから、育てられる期間が長く、収穫回数も多そうだ。10月にナスの苗を売っている沖縄より南なのだ。問題になるのは盗難と病害虫?
 
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 結局また2時間以上かけてホテルに帰ってきたわけだが、そこまでして無理に行くようなところではないですよというのが正直な感想だった。夫が甘いものを少し食べたいというので、最寄り駅にある小さな店に入った。朝食に食べた小豆粥みたいなのがうす甘かったので、夫はそれを食べ、私はミルクプリンみたいなのを選択。ビンの底には甘く煮付けた黒い小さな豆が入っていて、小豆みたいだなーと思いながら美味しくいただいたが、途中でそれが本当に小豆なのだと気がついた。あまりに小さかったので、別ものかと思ったのである。日本ならこんな小豆は等級外??逆か?日本が厳しすぎるのか??
 
 夫が調べてきたところでは、ホテルのレストランは広東料理で美味しいのだそうで。
その夜は最終夜であるし、ちょっと豪勢にホテルで食べますか!ということになっていた。13階から3階に降りるだけ。つまりは帰りも3階から13階にエレベーターで昇るだけ。だが。入ってみたらまず、タブレット端末を渡された。いきなり興趣をそがれるというか何というか。紙のメニューをお願いするも、タブレット端末とは違う内容だったりする。それでも注文を終えて、やってきたビールは小瓶だった。
 
 ここまではアリかもしれない。ところが、なんだかおかしい。厨房から料理が運ばれてくるとウェイトレスが料理の中身と注文表とを必死に見比べ、それから厨房の方に走っていく。連携がとれてない??同じことが何度も繰り返され、1時間経ったところで私たちが口にしたのは青菜いためとビール小瓶1本づつのみ。飲み終わっても、次の飲み物をオススメにも来ない。街のレストランだってちゃんと薦めにきたぞ??
 
 メニューには料理だけで、飲み物は載っていなかったので、どんなものかと飲み物のメニューを所望してみた。ビール小瓶が58元。お茶も同様。外のスーパーではビール大瓶が5,6元、レストランでは10元ほど。しかも大瓶ではなく小瓶だから、小売の10倍どころの騒ぎではない。(日本にすれば、小瓶1本2000円って感じ?)そしてホテルのレストランだというのにシャンパンはなく、ワインは小瓶1本がテーブル上に紹介されているのみ。ウォッカやウィスキーなども1本売りで、ものすごい金額。このメニュー構成、おかしい。
 
 というわけで、残りの料理はキャンセルして初日の四川料理のレストランに行ったのである。スタッフはこちらの顔を覚えていてくれた。ビールをたのんだら、分っておりますとも、という感じで初日と同じように冷たいのとぬるいものを1本づつ持ってきた。青菜はホテルで食べたので、肉と魚にする。肉は羊肉、魚は丸揚げの甘酢あんかけ。羊は皿の分量の半量にあたりそうな、トウガラシ(2種類入っている!)やニンニクなどと一緒にやってきて、今回は山椒ではなくて香菜が入っていた。こちらは肉だけ拾って食べるが、四川の人ならせっかくのトウガラシをこんなに残して、バカじゃあるまいかと思うはず・・・。

全部で150元ほど。

 
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 明日は帰国、その前に絶対に伝統菓子を買って帰るぞ!と誓って寝た。