沖縄北部の旅 3

 朝。朝食の間兼居酒屋の生け簀で泳いでいるのは1匹だけになっていた。
朝食メニューは昨日と変わってない。周囲のお客は楽しそうだ。この人たちが沖縄にきた目的の中には、「ホテルに贅沢する」というのは含まれていないのだろう。(むしろ、贅沢を求めてきた人々の方が荒むような気がする・・・)

 それじゃこちらはどうかと言えば、贅沢しようとは思っていなかったがここまで質素とは、という気持ちと、広いお風呂があってベッドひとつ余計にある部屋に3連泊ならまいっかという気持ちと。

 本日はもっと北部に行く。今帰仁は北部の範疇に入るが、本島の深奥部というわけ
ではない。那覇が南にありすぎなんである。那覇に通える範囲が南部で、名護に通えるあたりが中部、だと思うがそれを決める権限は私にはない。残念。

 ホテルの駐車場には、ポルシェがあった。むろんレンタカーである。なるほどホテルではなくレンタカーの贅沢の方を選択したか。沖縄なのだからとスポーツタイプの車を運転してみる、というのもありなんだろうし、平常心を失わないという選択もあり。ただ、きょうびの旅は皆スーツケース携帯、あまりにケチってメンバー全員の座る場所と荷物置き場が確保できなくならないよう、注意。

 出発。ナビに目的地を入れてみると、ぐるっと回るより海峡を渡り、目の前の屋我地島をつっきり、また橋を渡って本島に入って北上するのが早いと出た。ロシアに行くために北海道を縦断するような気分。かなり違うか。ここから先は沖縄本島でもとっておきの秘境、なんたってヤンバルクイナがうろうろしてるんだから!

 海岸線を走る。海面が近くて波が荒くないので、海の色さえなければ能登半島を走ってるみたいである。たまに集落が現れるようすも。のんびり走って途中また内海の小島を抜けて道の駅大宜味(おおぎみ)に出た。小さな道の駅だが、大小のサーターアンダギーが売られていたので買った。ここのサーターアンダギーはことのほか大きかったがまん丸の形状でもあり、大きいのは揚げるのが難しい。
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 そのサーターアンダギーの中で一番大きくてそうそう口に入らないのは結納の時に
やりとりされるもので、私も人生一度きりしか本物は見ていない。その気になれば公設市場の結納料理屋の見本で見られると思うけど、まだあるのだろうか。

 大宜味では巨大な大根を大量に積み上げていた。切った断面を見る限り大根の出来は良さそうだが、これが1日にどれくらい売れるのかと心配になる。そして車を出すとすぐさまバナナやらパイナップルやらタンカンやら山積みにしたお店発見、なんでお店が別々なのか。道の駅の中にこれがあれば盛り上がるのに!!
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 また地味に北上、ゆいゆい国頭(くにがみ)なる道の駅に入る。ここは大きくて、観光バスも訪れる感じ・・でもこの先の見どころは北部の自然だけ、ほかにどんな需要があるのだろう。たんに広いだけ?しかしレストランでは猪豚を使った丼やそばなど出している。食べてみたくても、まだ11時にもなってない。そうか、どうせ質素なら、ホテルの朝食なんて食べなきゃよかったんだね。
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 仕方なく黒米の入ったのとゆで卵が入ったかまぼこを購入。次いで野菜を売っている棟に行ってみたがこれといって珍しいものはない。露店が並ぶエリアではウィークデイというわけで店もろくに開いてない。中央の大きな棟に行ってみたら、まあ普通のお土産屋さんだった。ただ、黒砂糖の混じり物がないやつが売られていたので購入。糖蜜とか入れてない、原料のところに「さとうきび」しか書かれてないやつ。

 また北上。夫の「こっち行ってみようよ」という軽やかな声と共に車は県道2号線という、北部を横断する道に入る。元々人家もろくにない道で、最初の頃こそ後続の車が来たが、すぐに何も来ない道となった。ジュラシックパークに出てくるようなでっかいシダがゼンマイを伸ばしている。夫、「やんばる学びの森」とかの看板を見つけ、また脇道にそれる。そこで行き止まりだったらまた何もない道を戻らなければならないのでは?だが夫はと言えば北部の自然を満喫、スピード違反の取り締まりが待ちくたびれそうなスピードで走る。

 途中、「座り込み中注意」の看板があり、びびる。沖縄に関する認識は人さまざまだが今となってはおおむね「海のきれいなリゾート地」である。だが他にも基地しかないとか、色々反対している人々が外国人を雇って(理由と資金はどこから?)何かというとデモをしたり座り込みしてたり、というのもあって。でもこんなところで何を目的に座り込みをしてるのか警備をしている人に聞くのもはばかられる。とっとと素通りするのみ。
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 やがてやんばる学びの森とやらに到着。自然なんとかセンターみたいなのの、職員
たちに混じってレストランでお昼を食べる。雨だし肌寒いしウィークデイだからか職員以外は私たちだけだった。

 夫は、自分は沖縄そばにするから、私には学びのランチを食べろと注文。こんな山の中で1000円もする、野草のてんぷら満載のランチ。沖縄のおばさんが作るてんぷら自体に不満はなく、沖縄の野草自体にも不満はない。沖縄の野草が春先だけのものと考えれば非常に貴重な季節ものであり、亜熱帯の野草となればそうそう味わえないはずなんだけど。ええ、そうなんだけど。当の植物名が記入されていなければ学びでもなんでもないのでは?
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 また山の中を走る。センター?の立て看板の地図によれば、安波ダムを通り抜けて
東村(ひがしそん)に出られるはずだ。東村のつつじ祭りはかねてよりチェックしてあった。これで北部の田舎道をめぐるだけで一日を終わらせなくて済む。北部にはたくさんのダムがあって、これで沖縄の水と電力を供給している。
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 安波(あは)ダム。植物がそう植栽されていた。カタカナだったけど。車で通り抜けると、自生のツツジが咲いていた。花が大きい。沖縄の山間部では3月にツツジが咲くわけか。私は全山薄いエンジ色に染まっている東村(ひがしそん)の光景を想像していた。
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 東村つつじ祭り会場。しかし植えられていたのは自生ではなく、園芸種だった。地元の人にとって珍しいのは園芸種、だがよそ者にとって珍しいのは自生種なんである。いくつも屋台が出ていて、ヤギ汁の他にあひる汁というのもあった。汁ものは肌寒いからちょうどいいのかもしれない??
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面白かったのは山頂の自販機だった。サンピン茶(ジャスミン茶)だのパイナップルジュースだのご当地ものの飲み物が並んでいる中にたったひとつ青森県産りんごジュースが混ざっていたのである。屋台といい、山には園芸種を植えるくせに、口に入れるのはご当地ものかい!その保守性の方向は間違えているぞと言いたい。

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 それにしても、つつじ園の受付のお姉さんは一瞬虚を突かれるくらいきれいだった。「バイトしてるの?高校生?」とか聞いてみたくなるくらい。沖縄には濃い美人がゴロゴロしていて、それが普通の顔、その中でちょっと薄めの顔が本土で芸能界デビューしている感がある。濃い美人たちはそのまま親や祖父母と住んで、美人という自覚もないままチャンプルーをじゃかじゃか作ったりしている。ちょっと良い。

 そうそう、今帰仁に立っていた看板には「今帰仁は美人多し わき見注意」と記されていた。それはそうかもしれないが、ここまでくると美人は道にはいない。皆車の中である。これではむしろ美人を期待してわき見をしてしまいそうで、笑える。

 山の中を走ると、又吉コーヒー園というのがあったので、ここで一服することに。
ここは変なところで、沖縄でコーヒー栽培してるのはいいが1杯千円以上だし、肝心のそれは品切れているし。だが店内は木のテーブルも椅子もいい感じ。エチオピア
コーヒーを飲んでいると、外ではチャボが3羽連れだって歩いていた。

 店から出て外を見せてもらおうとすると「おいでおいで」という声がして、急ぐチャボ
の後をネコがついていく。「あんたたちじゃないのよー」と声の主が言う。チャボにパンをやろうとしているのだったが、ネコはネコとてありがたくパンを食べる。
 「この猫は母猫でもないのに、こちらの猫におっぱいまであげて育てたんです。」
そう聞いて思わず「出るんですか!?」と聞いたら「ええ、ちょっとデブなんですけど。」って、いやそんなことを聞いてるわけでは・・!

  店の奥には無加温の温室があった。その温室の入り口には無数のジェイド・バイン(まんまだが、ヒスイカズラともいう)が垂れ下がっていて、しばし呆然。こんなに沢山、なんでここに?そう聞いたら店の人は「植えたら咲いた」で済ませそうだが、こんな見事なの見たことない。それもコーヒー屋の裏のコーヒーの苗を置いてるハウスで!
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 外を見るとそこには柵があり、その中に馬がいた。乗馬教室をやっているらしい。
柵はいくつもあって他の種類の馬もいる。奥から子供の声がして、そちらではトランポリンで子供たちが遊んでいる最中だった。黒い犬が2匹、吠えかかる。ネコも何匹もいるが、吠えようが騒ごうがいっかな気にしていない。騒がしいのか静かなのか。山の中だからこそ可能な光景だった。
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 県道14号線で名護北部を横切り、ホテルに帰り、18時また大きなお風呂独り占め。本日の夕食は初日に見た居酒屋だ。7時にもなればさすがに開いていた。ビールは発泡酒しかない。だが薄ら寒いのにジョッキは霜だらけの状態で来て、つまみは相変わらず少なからぬ量だ。ニガナの和え物が美味しかった。
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 沖縄なので泡盛を飲むかと地元今帰仁の「古里」を注文した。水割りはジョッキで280円とか、ロックは500円だそうである。それでロック1つと水をお願いしたら、ロックがジョッキに入ってきた。いかな沖縄といえど今までこんなことはなかった。しかし、ジョッキでのつもりがグラスで来たらむかっとするだろうが、逆であった場合に文句が言えるわけがない。酒飲みのさもしさで、ちびちびとおとなしく飲んだ。水もあってよかった。ううっ。
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 勘定は4430円だったか、もう高いのか安いのかわからない。