沖縄北部の旅 4

 もう最終日だ。真ん中のベッドにおきっぱのスーツケースに荷物を詰める。本日は車で「許田」の道の駅に行き、その後「お菓子御殿で」お買い物、車を返したのちにバスで空港に。荷物を置いてから那覇でお買い物、しかるべき時間を過ごして飛行機に乗る予定である。

 チェックアウトのために階下に降りていくと、生け簀の魚は5匹に増えていた。4匹足されたのはわかるが、残っていた1匹はどいつなのか。古参の1匹をすくいとってから新たに入れたのか、それとも無造作に新参者の3匹を入れたのか気になる。

 車を出して、最初に行くのは割と評判がいい、「許田」の道の駅である。その日も中途半端な雨が降っていたが、既にお客さんが沢山入っていて、食べ物に群がっていた。巨大なハンバーガーにサンドイッチにお弁当に、どれもこれも美味しそうだ。外国人も弁当抱えてうれしそうにソフトクリームをなめている。
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 てんぷら屋があるので入ってみると、お決まりのもずくの天ぷらや、珍しいところ
では紅ショウガのかきあげがあり、珍しく「小さな」お稲荷さんはクレソン入りときた。
 春先である現在、川でどれだけクレソンが繁茂しているかは想像がつく。本土のもずくは細く上品だが、沖縄のもずくはぶっといので天ぷらの具にもなる。紅ショウガはといえば・・ショウガ自体は南のものなので、沖縄でも作っているのかもしれないが、そんなことはともかくこのクレソンのお稲荷さんと紅ショウガ入りのかきあげがいくつでも食べられそうなくらい美味しかった。黒砂糖も追加してお土産に購入。
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 「お菓子御殿」で懸案のお菓子を買う。沖縄伝統菓子であるところの「くんぺん」である。お菓子御殿はいかにも沖縄風な間抜けな値づけをしていて、小さい小さいくんぺんがひとつ90円、その3倍くらいのくんぺんが100円。大きい方を買うに決まっている。中にはピーナツあんが入っていて、ほっくりうまい。

 伝統ではなく駄菓子扱いされているのにタンナファクルーというのがあって、
くんぺん同様に一見ただの愛想のないまんじゅうだ。かりんとうに近い味がするこれもまたうまい。東京なら、銀座のわしたに売っていたが、くんぺんの方は記憶がない。
王朝の流れをくむ高級なお菓子(高いという意味ではない)である。

 レンタカーを返し、スーツケースと一緒にバス停でバスを・・と、空港直結の特急バスの時刻表もあるのを発見、来るときにこれを知っていれば延々とバスに乗らなくて済んだのに!!まあ、ゆるゆる行くのも楽しかったけどね。

 バスを待つのは我々だけではなく、若い一人旅の男子もいて、離陸まで時間があるから波の上宮を見に行くつもりであると語る。どうせなら公設市場に行きなさいよと薦める。名所旧跡ならば首里城をゆいれーるから見る方がロマンだけど、沖縄は庶民くさいところの方が面白く、公設市場は庶民くささだけでなく観光客もきちんと飲み込んでくれる。

 なるべくなら市場の路地のそのまた路地で迷ってみるのが面白いんだけど・・結納料理のサンプルとかなんじゃこりゃのお弁当とかは市場の一つ裏の道にあるんだし。そんなよ様の日常なんかどーでもいい人々なら公設市場の2階で何か食べて、後は
波上宮(なみのうえぐう)に行って海でも見ておけばよろしい。そういう人々には首里城
今帰仁城址もただの時間つぶしだろうし。←えらそー

 空港バスの窓から道の駅「おんなの駅」が見えた。許田同様、何か面白いものがあるに違いない、とけど途中下車もできないし今回は外から見るだけだ。バスは高速道路をすいすいと走っていき、空港までの所要時間は行きの半分以下で済んだ。

 空港。スーツケースをロッカーに入れて行く先はゆいレール赤嶺駅前のブックオフ。結構大きい。琉球漆器が沢山売られていて、新品が沢山あるのでお好きな方は見に行くとよろしい。夫のお目当てははご当地CDだったが、なにもなかった。てことは漆器は売ってもCDは売らないわけなのかしら。この本に紹介されているようなCDを買いに来たのに。
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 私的にご当地といえば、多喜ひろみの「ハッピーアイランドの本」である。沖縄の人々のラジオ沖縄の番組への投書を集めた本で、真面目にしてなお、朝日新聞とか暮らしの手帖とか、そういうのと双極をなしている。最近は新刊が出なくて寂しい限りで、今なお本屋に行けば新刊を探さずにはいられない。ブックオフには2冊あったが、どちらもうちにあった。お腹が痛くなるほど笑ったり泣けたりびびったり (沖縄の怪談はなかなかのものだ!)、様々なエピソードは今なおネタとして重宝している。

 赤嶺駅前にはユニオンなるスーパーがあったが、それは認識するだけにして隣の小禄駅のイオンの中の「ジミー」に赴く。「ジミー」とは何者かと言えばお菓子屋さんで「お菓子御殿」なんぞよりはるかに昔からあり、新垣菓子店よりはるかに最近に出来、店舗によってはスーパーやレストランも併設していて、結局何が言いたいかと言えばその味が沖縄の日常に深く貢献しているということである。

 30年前に安謝(あじゃ)のお店を見たときにはそりゃあもう感動、デリカテッセン
商品もケーキも家族主義の沖縄にふさわしくたっぷりと大きく、こんなに豊かな眺めがあるのかと思ったくらい。以来沖縄に行けば必ず寄らなければ気がすまない。
「ジミー」のお菓子の日持ちに合わせて日程を調整し、ここに来さえすれば、なにはともあれ心置きなく飛行機に乗れるってくらいで。

 しかしその他にはと周囲を見回すがしょせんはイオン、「ジミー」 以外はこれと言って面白くない。はす向かいの店ではくんぺんを扱っていたけど、もう買っちゃったし。あああ、本店で思うぞんぶん買ったり食べたりしたかった。時間がなかったんでこの店舗に行くしかなかったんである。

 一駅分歩いてもどって地元スーパーのユニオンに入る。まずは青果売り場でピーチパイナップルをカゴに入れる。これは文字通り桃の香りがするパイナップルで、まだ本土では珍しい。空港のより300円安かった。ちょっと小さかったが荷物にならないし、多すぎないし、珍しすぎるわけでもなし、医者に禁じられている人もそうそういないはずだからお土産としては悪くないはず。
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 ターンム(田芋)のパイというのも買う。思えば最近の芋系のお菓子は間違いなさ
すぎる。実のところジミーにもあって、あちらの方が美味しそうだった。悔しい。あと、お弁当も買う。本当はユニオンなぞよりは街中の個人商店みたいなのとか道の駅とかの方が沖縄らしく野蛮で結果的に美味しいものがあるに違いはずだが、今となっちゃー仕方ないではないか。

 そんなこんなで、ろくでもないかもしれないものばかり買って帰ってきた我々だった。
大きな声では言えないが、沖縄を知って以来、出来れば1ヶ月とか半年とか沖縄で、
あっちにうろうろこっちをうろうろ、はっきり言えば遊んで暮らしてみたいという
罰当たりな欲望が止まらない。こんなおばさんに誰がした。