PHDGuiding で極軸の設定

メインの観測機材として使っているLX200-20の極軸がずれている。通常は、ガイドしながら連続してCCD撮影するので気にならなかったのだが、別の星に移動するときに導入の精度が落ちていることに気がついた。これも基準星でSYNCをかけながら導入したりするので、やはり実用上は問題にならなかった。
2時間くらいガイドして観測したあとの赤径・赤緯を開始時のそれと比較して確認してみると、赤緯が北にずれており、極軸は西にシフトしていることがわかった。昨年、振動対策で三脚のベースにかさ上げを行ったときに、再設定するのをわすれたか、先日、観測室の変更を実施した際にぶつかったりして動いてしまったか。

極軸の設定はCCDカメラを使ったドリフト法で、NGCさんのページにくわしい解説がある。今回は、PHDGuiding を使った調整・設定を行ってみた。
原理・動作としては、PHDGuiding から出力されるDATA・グラフを見ながら行うというものである。オリジナルは、このページのようだ。これを日本語に翻訳したのが、このページ、ほかにも、このページに解説・実施例がある。

ガイド鏡はKENKO SE120 f=600mm + Lodestar を使って実際にやってみた。
まず、PHDGuiding は通常通りキャリブレートする。次にBrain マークから「Disable guide output 」にする。こうすると、グラフ表示は、ガイド星のずれを表示する。
方位の設定のため、赤緯0度南中方向の星をガイドしてグラフ表示させる。最初は、こんな状態であった。
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赤のdyの表示がガイド星がずれていく方向、青の動きははピリオディックモーションを示している。時間はおよそ、2分間。

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これは、調整の途中、だいぶよくなってきた。表示をRA/DECに変えてある。

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極軸方向を追い込んでみた。時間は6分間なので、いいところまできている。

極軸の方向を追い込んでから、真南から30度ほどの星をガイドしたのがこのグラフ。
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一般的な解説には、極軸の高度を設定するには、東西のどちらかの、できるだけ地平線に近い星で合わせる、とあるが、真南からこのくらい離れていてもわかる。北にずれていくので極軸の高度が高くなっており、下げる必要がある。
また、このことから、方向の設定は南中している星でないとよくない、ということが言える。

こんな設定で盛大にピリオディックモーションが出るような状態でも、ガイド出力をONにしてみると、このようになる。
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しっかりガイドしてくれており、ほんとうにたいしたもんだと思う。

ガイド出力を出さないモードでのグラフ表示は、望遠鏡の設置状態、極軸の方向、バランス、大気の浮き上がりなどをすべての影響を受けたものになっている。調整の過程では、このように赤径軸がピリオディックモーションだけでなく、動きがジャンプする動きもみられた。
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この望遠鏡は、購入してから15年以上も経っており、また、二晩くらい電源を入れたままで固定されたことがあったりなので、このようなことにもなるものと思われる。
観測所を作って以来の懸案となっていた、望遠鏡の振動対策もこれらのグラフをみると、赤径・赤緯同時に現れる動きはないので、効果があっているものと考えてよいだろう。

それにつけても、このPHDGuidhingはよくできたソフトであると思う。ギアのあたりの調整、赤道儀の補強などに具体的な数値データとして、もっと活用できそうである。いまは観測シーズンであり、高度のずれを調整するのは、すこし手間がかかるので、当面はこの状態で使っていくことにする。