クロアチア・イスタンブール旅行 12 アジア側カドキョイ

6月28日(日曜日)

 

 朝、起きたらやることは、隣のレストランの猫を見に行くことだった。

昨夕通りかかったときには、通りに出したカウチで子猫たちが大暴れしていた。お客さんたちはそれを見て座り、子猫を眺めながら食事していた。白人の女の子が子猫を見ていきなり抱き上げたが、やり方が気に入らなかったのかひっかかれ、周囲の人々の笑いを誘っていた。つまり、「大丈夫なの?」ではなく、「あはははは、やられたねー。」である。私だってその前に抱き上げてはみたが、母猫に「にゃ!」ととがめられ、謝罪の末に地面に戻したのである。相手は神様の使いなので、礼儀というものが必要だった。次にトルコに来るときには、ネコじゃらしが必要だった。こちらが行くのではなく、ネコの方から来るようにしなければ!!

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 その日はアジアン・サイトに行こうと夫に言われていた。西と東が出会うのがイスタンブールだそうだが、その「東」に行こうというのである。記憶によれば、アジアン・サイトのロカンタ(食堂)は全ての料理がたっぷりしていて、アイスクリーム屋の盛りも立派、観光地ではないので、呼び込みもいなくて静かだった記憶がある。その時行ったのは同じアジアン・サイトでもウシュクダルだったので、今回はカドキョイに行こうということになった。

 今回のホテルはまことに便利なところで、船着場まで5分。ところが、着いてみたら出航まで5分!急がなければと見れば、チケットを売る販売機から誰かが入れたはずの10トルコリラ札がべろんちょと垂れ下がっている。これじゃ買えないじゃん!と近くにいた監視員を呼ぶと監視員はにっこり笑って他の機械にその10トルコリラを入れて二人分のトークンを出してくれて、おつりをくれた・・・。だからそういう話じゃなくて!!相手は早く行けと身振りで示す・・・。

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 その日も晴れていた。埠頭には釣り人たちが並んでいる。トプカプ宮殿を見ながら、10分も経たずに目指すカドキョイに到着。


 裏道を散策しようとしたら、目の前に現れたのは5リラ・ショップ(大体250円)だった。それが小さなナベやらコーヒーカップのセットやらかわいいなんてもんじゃなく、つい夢中に。心を鎮めて裏道に入ると、今度はパンやら野菜やら魚やらの商店街があり、そのまた奥にはレストラン街が続く。魚から野菜から、全てが山盛りで、クロアチアよりはるかに種類も数も多い。そしてまた、ネコがいる。魚屋の前にちんまり座って。すると魚屋のおじさんがぽんっと小魚を投げてやり、ネコはありがたくいただく。その光景は、ここだけではなく他でも見られた。そう言えばエディルネでは裏道にネコのためのレバーが置かれてたっけ・・・。

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 レストラン街のそのまた裏道に行ったら、有料トイレがあったので入る。トイレは1トルコリラだったと思う。入るときにペーパータオルを1枚くれる。入るとトルコ式のトイレで、蛇口の下には小さなバケツが置いてある。このバケツに水をくみ、この水でお尻を洗うことになっている。紙は流してはいけないことになっていて、紙用のバケツも置いてある。大事なのは紙を流してはいけないということであり、バケツの水でお尻を洗うことではない。つうか、そんなの訓練してないし。で、最終的には、尻用バケツにくんだ水でトイレを流して出てきた。


 循環する路線のトラムに乗ってみた。チケットを買う場所がわからないので、運転手から直接買う。トラムはごとごとと坂道の商店街を登っていき、ついで住宅街をぐるりと回って降りて海辺を通った。夫は、ヨーロッパ・サイトよりもこちらの方が自由な気がすると言う。イスラムらしくスカーフかぶってコート着た女性が殆どいないから。あちらは観光地だから、もしかするとスカーフかぶってるのは地方から観光に来た女性達かもしれなかった。

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自由の証拠としてレストラン街では普通に酒を出してるようだし、中にはビア・パブなんぞもあった。


 トラムで結局2周した。乗った地点より手前で降りて歩いてみる。古本屋が集まるビルがあった。扱う本にハードカバーは少なかったが、こういうビルの存在の方が大事だ。外に出て、別の古いショッピング・センターらしきものに入ってみた。休日とて、殆ど閉まっている。だが、店の内容はなぜか殆どがミリタリー関係なのだった。ミリタリーなオタクがここにもいるのか?まさかここで装備を揃えてから入隊するってわけでもあるまいし。だが、これはこれで古本屋ビル同様、イスタンブールの規模を証明していた。


 また歩いていると、よく言えば老舗の雰囲気の、悪く言えばうちすてられた感じの菓子屋発見。いや、正しくはその店の中で、見たことのないお菓子を発見。ナッツやドライフルーツの入ったあんが入っているという、でっかいくりまんじゅうみたいなそれを2種類買った。あとで食べてみて、美味しかったら補充して持ち帰るつもりだった。


 昼飯にしようと思う。が、このあたりは気合いの入った客引きはしない。適当に店を選んで入った。食べたのがこれ。ワインは飲まずにアイランと水ですませた。

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 途中、白人の親子が入ってきた。メソメソする子供を、店の従業員達が地味にあやす。そういえばトルコ人は子供が大好きで、こういうのは放っておけないのだった。こちらはちまっと先刻買ったくりまんじゅうを食べてみて、やはりこれは補充だなと納得。だが、さっきのお店に帰ることまではしなかった。パンとお菓子を商う店はいくつもあったからである。八百屋も魚屋も肉屋もコーヒー屋も。またネコが魚屋の門口で座り込んでいた。いま思えば、ネコにやる魚の代金を支払うこともできたなと思う。もしかして異教徒の余計なお世話か。


 お菓子屋では大騒ぎした。トルコのお土産菓子は代表的なものは殆ど網羅したつもりでいるが、まだ足りないようで、あっちをこれだけ、こっちをこれだけ、あ、これはオレの分として少しは買っておかなきゃ、とやっていたら箱菓子なしで3000円以上にもなった。くりまんじゅうのほかにも、真っ白なおおきなこぶし大の塊(クッキーだって!?)甘食みたいな形のアーモンド・ケーキ、これまたこぶしほどの大きさのココナツ・マカロン(外がわはカリカリだけど、内側の半生部分がなんとも美味しかった)などなど、とにかく、悪いのはトルコだった。


 満足して歩いていたら、出会ったのはアイスクリーム屋で、店先でまさに私が食べたかったアイスクリームを食べてる人に出会った。極彩色のアイス、つまり少しづつ違う味のを盛り付けてあるのだ。あれと同じのをくれ!と言ったら「ミックス?」と言われる。そうか、あれはたんなるミックスだったのか!あんな味やらこんな味やら一杯入ってて、幸せ。なんで日本ではこういうのがないのかな?あ、手間がかかって大変だからだね。

と、おじさんが一人やってきてアイスを注文、うれしそうに食べて帰っていった。カワイイ。その後はなぜかティファールのアウトレットも見つけてしまって、クロアチアで使い心地が気に入ったフライパンまで買ってしまった。だって安かったんだもん。白いし。


 夫も私もアジアン・サイトが気に入った。酒だって飲めそうだし、次回はこっちに宿をとろうかという話にもなった。が、さて船に乗って帰ろうかと船着場に行ったら、子供が二人、夫に話しかけてきた。なんでもじぶん達のパスで乗せるから、その分の金額を現金でくれという。そんなこと言われたって、財布を出したところでひょいと持っていかれるかも??


 と、そこにおっとり刀で若い男女3人組が登場。そうこうするうちにフェリーの監視員がやってきて、クソガキどもをどなりつけて退場させ、ついで男女3人組と話をすることになった。

 彼らは高校生で、一人は日本語を勉強中、男の子は秋葉原に行ったことがあると言った。「そうかそうか、オレは月に2度、秋葉原に行っているぞ!」となぜか威張る夫のことを「彼はエンジニアだから」と説明するとその高校生もそうらしく、しばしそのあたりのことを話すことにもなり、結局彼らに船代をおごってもらうことにもなってしまった。こういうこともあろうかとお礼用に夫は匂い袋を持ってきていたのだが、その日に限ってスーツケースの中。日本人中高年、トルコの高校生にたかる、てか。

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 トルコ人といい、クロアチア人といい、こんな風だから日本で困っていたら優先的に助けてやりたいし、親切にしてやりたい。だが、彼らはあくまでもフツーの白人で、表参道を歩いていても秋葉原にいても、ほかの白人達と全く区別がつかない。なんとかならんのか。


 彼らに手を振られながら和やかに別れたはいいが、船が到着したのはカラキョイ、違う港だった。ガラタ橋をはさんだ、反対側だったのである。ま、いっか橋を渡ればいいだけの話だし。橋の上からは沢山の釣り釣り糸が垂れていた。我々はその下にあるレストラン街を通った。お昼はとっくに過ぎていたが、のんびりとボスフォラス海峡を眺めながらお茶してる人々がいた。

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 途中、白い制服を着たウェイターが3人がかりで一人のズボンの裾をどうこうしていた。上から降りている釣り糸に見事釣られたらしかった。上の釣り人には状況は見えないので、何か釣れたと思っているのかもしれない。だがやがて釣り糸の端につけられたルアーは悪態とともにちぎられて捨てられ、下の怒りの声の次は、上の方からため息が聞こえて来そうだった。


 ホテルに荷物を置いてから、散歩に出た。相変わらずの観光地の喧騒の中にあって、時々日本語で話しかけてくるトルコ人もいる。日本にいたことがあろうが奥さんが日本人だろうが結末は大体客引きなので、その結論に至れば和やかに別れることとなる。

 と、鉄の門の中に続々と人が入っていくのが見えたので、ついで入ってみたら、そこはエミノニュ公園だった。高木の木陰になる花壇に植えられた花自体はそんなに珍しいものはないが大きく広く植えつけられ、これはこれできれいだった。この公園は、イスタンブール市民の憩いの場となっているらしい。そういえばその日は日曜日だった。街にはおよばれの手土産なのか、お菓子の箱を持って歩いている人々もいたし。と、灰色とこげ茶色で彩られた鳥がいた。これが、ハトかなと思ってみてたら、「カア!」と鳴いたのである。ええええっ、これってカラスの一種なの?それともカアと鳴く、大型のハトの一種なの?それとも全然関係ない、アカの他鳥?分類の魔法は最終日まで私を悩ませようとしていた・・・。

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 そしてまた菓子屋。今度はホテルの裏手の、お菓子専門店。裏手でなくとも蓮向かいとか正面とか同じ通りとか、いくらでもお菓子屋はあったのだけど、どう見てもその店の品揃えが良かったので、そこで箱菓子を選ぶ。一番の難関はヨガの先生で、前回ターキッシュデライトまたはロクムという、甘い、中にナッツが入っているのを差し上げたら「私これ大好き!」と言った挙句、後日「違う、あれじゃない。同じものでも、あれは高級すぎる。もっと安っぽい味でないと・・。」と訂正しやがったのである。なんとわがままな。聞いてみれば歯ごたえがあるのがいいらしい。硬そうな薄い何かをナッツをからめて葉巻上にまいてあるのを購入。


そしてここで買ったのは、バラのロクムなのである。普通のバラのロクムはバラの香料が入っているだけだが、ここの店のは乾燥させたバラの花びらをまぶしてあって、食べ物とは思えない美しさ、そのうえ中にはナッツがたっぷり入り、女性陣のハートわしづかみは間違いなし。これを4本買い、この店のカラ箱を別に4枚入れてもらった。これで完璧!


 とはいえ本当に近しい人々が期待してくれているのは、いまいち作り方が確実じゃない粉末スープであり、見たことないほどナッツやゴマがまぶされている、現地の人々が普通に食べるお菓子である。なので、帰ってから改めて他の箱におせち料理よろしく色々詰め合わせて面白がってもらうことになる。これはこちらにとっても好都合で、人数や量の融通が利くし、成功も失敗も皆で共有できるし、なお、勢いで買ったお菓子を私達が全部食べなくて済む・・。


 お菓子はいったん部屋に置いて、さてその日入るレストランは決まっていた。初日に入った、おばさん(同じ年齢くらい、いやまさか年下??)が粉を打ってマンティを作ってくれる店。

 マンティとは何かといえば極小のラビオリで、どれだけ小さく作れるかが主婦の腕の見せ所なんだそうで、もちろん小さく作るためには生地も思いっきり薄くなければならない。だが、やってきたそれは、上にヨーグルトがかかっていた。これって、そのへんの日本人にはちょっとキツイかもしれないなあ・・・と思いながら食べた。

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