古い赤道儀用のモータードライバを作る

先日来支援に行っている、小山市天文台には、メインの65cm望遠鏡の他に、いくつかの望遠鏡がある。それらのうちで、20cm F8 の木辺鏡を載せた頑丈な赤道儀があるのだが、モータードライバがないとのことで、製作することにした。

前回お邪魔したときに全体の写真は、写さなかったようだが、赤径軸のギアまわりはこんな感じ。かなり、がんじょうな造りで、ウォームギアも昨今の赤道儀に比較するとかなり大きい。
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駆動しているモーターは、オリエンタルの2相ステッピングモーターで、200ステップ/回転のものである。
赤緯軸はモータードライブではなく、タンジェントスクリューとなっている。かなり昔のものなので、こんなものだったのだろう。
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使われているメイン・サブのウォームギアの歯数が正確にわからないので、適当に仮定してドライブパルスのレートを決めて、あとは現地で動きを確認しながら調整することにする。

必要とされるパルスレートを検討してみると、
  ・平均恒星時   86146秒
  ・メインウォームギア歯数 500
  ・サブウォームギア歯数 30
  ・Motor Step数 200
として、ステップモーターを1-2相ドライブで駆動するものとすると、
  500×30×200×2 ÷ 86146 = 69.65Hz
すなわち、周期 14.36msのパルスで駆動することになる。

これまで、赤道儀用のモータードライバをいくつも作ってきたのだが、すべてPICマイコンを使ったものだった。今回は現地でのチューニングの必要性から、Arduinoを使うことにした。
Arduinoであれば、ノートパソコンさえあれば、特別なWriterがなくとも、プログラムの変更、書き込みができる。

というわけで、ありあわせのケース、電源、モータードライバなどを使ってつくったのが、写真のものである。手持ちの2相ステッピングモーターをつないでテストの様子。
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ハンドコントローラーは、WEST/EAST方向微動と、FFキーを設けた。FFキーを押しながら、それぞれの方向キーを押すと、20倍速で動くようにしてある。もっとも、20倍速でモーターが応答するかどうかは現地で動かしてみないとわからない。

つくりをもう少し。前述のように、前の職場で廃棄になった装置のケースのみを使用して組み上げた。
右側、Arduino UNO互換基板の上に、ユニバーサルシールド基板にモータードライバを製作した。
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赤色の基板がモータードライバで、専用IC A4988を使ったものである。こんないちいさなものなのに、簡単にマイクロステップコントロールができる。Arduino側から、ステップパルスと方向信号を入れるだけでモーターを駆動することができる。マイクロステップのレートも、ハーフステップから16分割までプログラミングできる。
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出力は、2Aまで可能とのことだが、この状態では放熱が良くないので、そこまでは使えないだろうと思う。ドライバの回路がトランジスタではなく、FETなので、熱的には有利であるし、ターゲットのモーターは 0.7Aとのことなので、小さな放熱FINを取り付けて対応しようかと思う。ちなみにこの基板、Aitendoから 595円で購入。昔のことを思うと、かなりの激安である。

来週はHAMフェアがあり、準備もいろいろとあるため、実際の赤道儀に合わせて使ってみるのは、9月に入ってからになろうか。そのころには、すこし暑さもゆるんでいるだろうか。