台湾 高雄の旅 2

 朝食に行くと日本人のお婆さんがご主人に向かって「(そばを通る人の)ヘンな香水が臭い!」と怒っていた。(いまどき香水が珍しいなんて、どちらの田舎から? )とか(いつもと同じ朝を迎えたいなら家から出るんじゃありません!)とか思いながらにっこりと微笑みかけたらお婆さんはびくっとして黙った。
 
 確かに朝食に相応しい類の香りではなかったけれど、出来れば旅先ではあまりお好みではないことも旅情として片付けてほしい。無理やりにでもいつもと違うことを楽しまないで、一体全体何をしに旅行に来たのやら。
 
 食事は例の如くのビュッフェで必要なものは揃っていた。私も野菜料理と卵をたんまりといただいた。小さく作った肉まんの類が熱々なままケースに入っていて、その下には蒸したのか茹でたのかこれまた熱々の落花生があった。生落花生ときたら小一時間もゆでないといけないので、ご馳走だ。うれしくカラをむいたら、小粒ながらひとさやに4粒も、隙間なく斜めになってぎゅうぎゅう詰まっていた。こんなの初めて見た。
 
 夫が、「オマエの1.5倍くらいのお尻の人がいるぞ。」と言う。見るともなく見たら黒髪をひっつめた南方系の白人?がいた。あちらはお尻から太ると聞いたことがあるが、確かにお尻がずば抜けて立派だった。何度もおかわりに行っているようだったが、私だって初めて食べる異国の食事が美味しければそうする。
 
 だが食事が終わり、部屋に帰ろうとしたらエレベーターの前にはその人が二人いた!
髪型も雰囲気もそっくりで、「なんだ二人いたのね!」と言ったら夫は「いや、同じテーブルに5人いた。」それは一体どんなグループなのか。「100kg超え友の会」と夫。
・・頑張れば私も入会資格を満たせるかも知れないが入会してどうする。ここが日本で彼女たちが日本人なら私ももっと自由になれるのになあ。

 食後洗濯室を見に行ったら、洗剤まで無料で完備されていた。そばのソファでコーヒー飲みながら本日の予定を段どり、タクシーの運転手に渡すべくあらかじめ行先を小さなメモ帳に記しているうちに洗濯は終わった。で、この朝、羽田空港が断水してると知ったのである。世界一清潔と言われた羽田が水が汚れているので止めているとのこと、なんたるこっちゃ。

 昨日通った市場を見学に行くが、開いてなかった。昼頃から開く市場らしい。現金を用意すべくセブンイレブンのATMを試したが中国のカードでは使えなかった。
タクシーで科学工芸博物館に行く。以前の夫なら意地でも地下鉄を使ったはずだが、医者にあまり歩くなと言われている身の上なので、しぶしぶタクシーに乗る。だが高雄のタクシーは安く、出会った運転手は皆親切だった。

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 科学工芸博物館の広々とした入り口には大きな実をつけたのとか、葉っぱが皆下を向いてる樹木が並木になっていた。建物左には博物館付属レストランがあり、昨夜の食事を思えばいっそタクシーを飛ばしてここに来たかったと夫が言う。でも、ビールはないと思う。
 

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 博物館の中身は教育向けらしく、小中学生が沢山いた。全体的に体が大きい気ががする。外国人が珍しいのか通り過ぎた直後、えらい勢いで振り返った。普通の夫婦ですまん。入り口近くにはシカの毛皮やスパイスが展示されており、初期台湾ではそういうのが輸出されていたという。鹿は涼しいところにいるという思いこみがあったけど別にそうでもないらしい。種子島で浜に打ち上げられてる鹿を見たことがあったっけ。

 夫が、最後の有人爆撃機と呼ばれたという飛行機について説明してくれる。翼が小さいのでそのぶん飛距離を稼げたが、小さい翼ゆえよく落ちたって・・有人なのにか!
マラリアを媒介する蚊のでっかい模型もあって、確かアレは後ろ脚をあげてとまるんじゃなかったか、不妊のメスを放って沖縄では撲滅したんじゃなかったかとうろ覚えを夫に言うと、それは失敗したんだよと。マラリアの蚊ではなくてウリミバエの話だった??

 博物館を出て、博物館の窓から見えた廟を見に行く。裏庭には扇状の葉にストレリチアっぽい花をつけたのが植えられていて、写真を撮りに近づいたらむき出しの腕に蚊がとまろうとしやがった。タイムリーな蚊はもちろん後ろ脚をあげたかどうかなど確認もせずにたたき殺された。
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 近道のつもりで裏道を歩く。誰の所有なのか、バナナが実っている。道の反対側には貸し農園らしい菜園があり、ニガウリに袋掛けをしている。確かにきれいな方がいいけど、ニガウリに袋かけ?日本の潔癖趣味が伝染したのか、それとも風で傷むからなのか。
通りかかった長屋の路地にはバイクが並び、入り口には履物が置いてあった。下駄箱が外に出してあったりするが、治安がいい証?豊かってこと?なおも豊かなことには外に多肉植物コレクションの鉢を並べている家もあった。

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目的の廟はこんな風にマンションの一部になっていた。台湾ではこの構造も普通らしい。店や食べ物屋がごちゃごちゃとある中を通って、タクシー拾って三越に。随分乗ったつもりだがお勘定は170元、1元が大体4円と思えばここで効率的な観光を楽しもうと思えばやはりタクシーを利用した方が良さそうだった。台湾名物の段差だらけなうえにバイクが駐車されいて絶対にまっすぐ進めない道からいきなりおハイソな場所に到着。
 
 そろそろお昼なので上階の食堂街を目指す。食べ放題の香港式飲茶に人が並んでいたが、朝食を沢山食べたゆえにこのうえ頑張ろうという気になれない。地下まで降りて座ってウーロン茶を飲んだだけで済ませた。これがトールサイズで氷も入ってなくてそれだけでお腹いっぱい。
 
 三越デパ地下はいまいちなので隣にあるそごうに行った。台中の有名菓子店が入っているが流石にお高い。月餅を買おうとするが椰子だの緑豆だの欲しいのに限って品切れている。月餅は元々お安いものではないが、長持ちもしないのか消費期限も近い。自分用に少し買って、新東洋も入っていたので確実にして長持ちするお菓子を補充。
 
 4,5年前のガイドブックによれば一区画先のショッピングセンターにはスーパーがあるはずだったが、スーパーはなくなっていた。だがそこの17階には台湾最大級の本屋があると知り、疲れた夫、いきなり蘇る。なんで読めない本が並んでいるところに行こうとするかなあ?無理しすぎ、いや、はしゃぎすぎ。
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 ホテルに帰らんと乗ったタクシーの運転手は日本人と知って日本の歌を流してくれる。最高気温30℃になる、庭木(庭草?バナナは草だから・・)にバナナが実る11月の高雄で聞く森進一の「襟裳岬」は可哀そうすぎて泣ける。
 
 夫は昼寝するというので私一人で朝は開いていなかったホテルの近くの市場とお店を探検。近くにお菓子屋があるので見に行く。ばんばん試食を出してくれるが中途半端な味ばかり、月餅があればなあと思いながら唯一普通の味のアーモンドクッキーを買う。180元。タクシー代金が安いのかお菓子が高いのか。

 帰り道、同じ通りの不動産広告を眺めてみた。期待した台湾の暮らしが見える写真はなく、張り出されているものは柱と床だけが写っていた。オフィス専門なのかと首をかしげていたら店の奥から犬が私を見にきた。写真を撮っていたら今度は中にいた人がわざわざ外にまで出てきてお名刺までくれて、「もうこのコったらやることなくて暇なもんだから。でもカワイイのよねー。」とか言ってるのだろうが、どうしたらいいのか、こちらはへらへらと微笑むのみだった。

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 檳榔(びんろう)屋の前には大きなスイレン鉢が置いてあって1本は蕾の色が見えている。いる間に咲いてくれたらうれしいなと思いながら市場見物。午後ともなればさすがにどの店も開いていた。豚のあんよが整列してる店もあるし、魚が口をぱくぱくさせてる店もあれば蛙専門店もある。素材だけでなく、全国粽選手権大会2位、みたいな横断幕を掲げている店ではこれまたおおぶりの試食を惜しげもなく出してくれて。そりゃ美味しいよ?でも、いつこれを買えばいいの!?

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 中華包丁でばんばんと肉を切っている羊と牛肉の店の横が何故かあんこ餅を売る店で、餅はビニールで覆ってあるとはいえ、これはエリア分けするべきではないかと思う。青果店ではヘチマとニガウリに発砲スチロールのネットを被せて売っていて、驚く。日本でリンゴにネット被せて売ってるのを見た白人になった気分?

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 ブギャオプシャーッという声で振り返ったら、通りかかった大きな犬に肉屋の猫が通り威嚇しているところだった。猫はそうそう見ないほどでっかいキジトラ、市場の中を犬連れで通るのもなかなかだが、肉屋は肉屋で、いつも連れて来ている様子。それも1匹だけではなくてもう1匹、こっちも大きな三毛だった。肉屋が扱う肉も形からして何の肉のどのあたりだかわからなかった。
 
 香水をつけないと言えば「よくそれで外に出られますね」と言われそうな国もあり、生卵や生水、まして刺身を食べるなどと言えば「いやあ皆さん、丈夫で何より!」と笑われそうな国もあり。是非、日本で香水なしで外を歩いたり、生卵を食べていつお腹を下すかとドキドキしたりという旅情を味わって欲しいなあと思わないでもない。
 
 ホテルに帰る途中、黒い犬2匹を散歩させている人を見かけた。片方だけリードをつけているが、リードをつけてない方がしばしば自分の行きたいところに行ってしまう。名前はシャオイエン(何度も呼ばれるのでこっちが覚えた)。やがてシャオイエンはご主人が行くのとは反対の方向に消えて行ってしまったが、家はわかっているので大丈夫なのだろう。しかしどうせならシャオイエンの方にリードをつけるべきではないのか。
 
 部屋に帰ると、本日は客家料理の店に行く、と夫が宣言。夫はベトナム旅行以来「旅先ではせめてテーブルクロスがかかっている店に!」という趣味主張をすることになった。しかしたどりついたこの店も入り口は開け放っていて、外見は昨夜のお店とあまり変わりはなかった。もちろんテーブルクロスはなし。
 何故テーブルクロスなのかと言えば20年前の香港では常識だったからである。しかし高雄くんだりまでテーブルクロスが伝わっているものなのか、一旦伝わったはものの、要らないことに気が付いたから省略となったのか、もうどうでもいい。
 
 お店の人はにこにこと日本語メニューを出してくれたが例のグーグル翻訳なのかかえって難しい。糸瓜と書いてヘチマを注文しようとするもダメで、夫が旧字で書いて通じた。結局、羊とネギの炒め物、ヘチマとハマグリの炒め物、エビの揚げ物を注文。
エビにかかったソースが甘辛でピーナツがかかっていて美味い。

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 満足してホテルに帰った。明日もここでいいような気がするくらい。