スペイン旅行 出発から初日

今月初めから、2週間スペインを旅行した。

例によって、妻による旅行記


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 その日は出発する前に、余計な仕事までも済ませた。何をやっていたかと言えば猫とりだ。同じ町内の庭木藪に数匹産んで居場所が分からなくなっていたが、見つかったと連絡が入り、ご近所一同で捕獲作業。しかし広い物置の下に入り込まれて一度は撤収、しかし危機感を持った母猫が子猫を一匹づつ連れて引っ越し開始、その鳴き声に気がついて次々に身柄を確保、里親に引渡したのが午後3時すぎ。たった一人でやりとげたというので「猫とり名人」の称号を得たのが4時、興奮冷めやらぬ中、深夜の便に備えて休息を十分に取り、家を出たのが7時。

 

 こんなおまけを済ませてから、半月にわたるスペイン旅行なんである。全部読もうなんて思わず、必要なところだけかいつまんで読んでほしい。つうか、必要な話なんてあるとも思えないが。

 

 今回はカタール航空を利用。夫がキャンペーンを見つけ、思いっきり背伸びをして年金生活のくせに「ビジネス・クラス」の席をゲット。キャンペーン価格であろうともそこそこお高いだけあり、特別感半端ない。荷物を預けるのも手荷物検査も並ばず済むようになっており、空港ではラウンジが利用できる。そのラウンジには無料の酒やら食べ物が用意されており、ゆったりと搭乗を待つことになる。

 

 それでまあ周囲を観察してみると、一見優雅でガツガツしていないように見える。しかし無料のカレーに興奮しておかわりまでしちゃう日本人、日本酒にぱあっと顔が明るくなるフランス人、クッキーに即座に反応してしまうアメリカ人などなど、これが本当の「人間だもの」。

 

西原理恵子によると、「飛行機は太るからキライ」だそうで、私もなんーとなくイヤな予感はしていた。それでラウンジでは控えめにしてはいたが、乗り込んだら勧められるままに普段は飲まないライムジュース(ミント入り)を飲んでしまい、シャンパンはおかわりしてしまい、その上、山盛りの温めたナッツまでおかわりがついてくる。食事は好きなものを好きなだけ好きなタイミングで食べることが出来ますと言われ、なおそれがオシャレで美味しいとなれば。ええ。がっつくなと言われても無理でしょう、人間だもの。

 

 座席は平らになるのでそれなりに眠れるし、脚がふくれることもなし。平等なのは揺れと飛行時間か。だがしょせん飛行機の中なので、空間はカプセルホテルみたいなだし、各々の席だとはいえ人種を超えて見知らぬ男女が雑魚寝してるようなもの。化粧落として眠るのは仕方ないとしても、さあ君はここでカーラー巻く度胸があるだろうか?

 

 そして乗務員が渡してくれたアメニティはBRICSのスーツケース素材の堅牢なポーチに入っていて、それはそれは立派だった。私と夫はドーハまでの便で1つづつ、2時間の中継のあと今度はバルセロナまで飛ぶからまた2つもらった。帰りは帰りでまた4つ、うちには都合8つのアメニティが積まれることになった。うちは庶民らしくきっちり持ち帰り、いくつかは知人へのバラまき土産となったがやはり富?は偏在し、降りるときにはその程度の富なんざどうでもいい客によってポーチは置き去りにされていた。次に乗ったら私も置き去りにするのか?いやあ、ネットオークションで売っぱらうことを画策するでしょう。

 

 飛行機1機飛ばす経費の8割がビジネスとファーストクラスから出るらしい。それを聞いた知人達は全員、「それじゃエコノミーの乗客はクソみたいなもんでしょうね。」と言った。しかしその残り2割がいなければしょせん赤字、クソではなくて重要度とか優先順位が低いという言い方が正しい。

 

 それにしても、わが人生で「ビジネスクラス」以上に「カタール航空」なんてものに乗る日が来たことの方が驚きだった。ドーハだって?悲劇がどうとかは聞いているが、内容は知らないし。機長はムハンマドと聞こえたが、乗務員がカタール人ではないことも驚き。いわゆる途上国ではスチュワーデスは上流階級の子女のお仕事であり、そうでない国では普通の職業だという。だがこの場合の問題は宗教上のことで、女子は身内ではない男子の前に出ることは出来ず、まして異教徒にサービスするなどもってのほか、もしやったら嫁の貰い手が、どころか父親にムチでひっぱたかれる??のではないか?? 男子は男子で異教徒の、まして女子なんぞにご禁制の酒を振舞うなどの屈辱的な仕事をするわけにはいかないからか?? よくわからん。

 

 出発は夜中の12時すぎ、食事が終わったのが午前2時すぎ、寝て起きて朝食食べて、機上から見たドーハは海に突き出た地面さえもデザインされていた。砂上の楼閣だと夫は言ったが、まさにそんな感じで、まずは「この国は油で水を買った」という言葉が浮かんだが、水どころかこの目に見える何もかも、砂以外のものをカタールは石油でまかなって現在の体裁を作っている。随分いびつな幸せなのでは?余計なお世話?わからん。

 
イメージ 1
 機外には地平線まで続く砂漠、たまに丸い畑のようなものも見え、トカゲの背中のような山脈の間にも丸い畑が作られていた。その昔、赤ちゃんのおむつの吸水ポリマー?で保水する技術があって、と聞いたことがあるが、あれはおむつのかたまりの上に出来た畑なのか。

山脈があるから直接には熱風はさえぎられるのか、それとも山脈の間をトンネルのように風は吹きぬけるのか。山脈のあっちかこっちに海があれば山に当たって雨が降るはずだが、肝心の海ないし。わからん。

エジプト上空になると、機上からは見えなかったが地図上にナイルが表示され、四角い畑が出現する。それは散水の要らない畑ということなので、ひとごとながらほっとした。

 

 ドーハの空港での中継時間をどう過ごしたかは覚えていない。けろっとまた飛行機に乗ってポーチをもらって食事や飲み物をもらって6時間半後にはバルセロナに到着していた。

余談だが、暇つぶしにと持って来たのが桐野夏生の「OUT」。本の中の世界と外の世界の差が半端ない。あまりの面白さに夢中になって読んだが、なんでこのタイミングでこれを選んでしまったのかと思いもした。私らしい失敗?結果的には正しい選択??わからん。

 

 バルセロナ空港では、こちらで使うSIMを入手しようとしたが行列が出来ていて、対応しているのはひとり。しばらく並んでいたが後に続く人々は人の流れをさえぎるように並び、それでいて気がつかない。他所でもなんとか出来るだろうと、行列を離れた。

 

 電車でバルセロナ・サンツ駅(一番スリが多い駅だという)。ホテルの名はバルセロ・サンツ。駅の真上に存在するはずだが、その入り口がわからない。やっとHのマークを発見して小さな入り口から入る。このホテルがデザイナーズ・ホテルというのか、宇宙を意識して作られていて、ロビーにはR2-D2なぞ飾られていて、そりゃまあ忘れられないものになるのかもしれないけど、駅の上にあるだけで十分ではないのかと滞在中はいつも思った。ホテルの洗面所は何故かダブルシンク、これも慣れれば便利なんだろうけど並んで顔を洗ってもなあ。

 

 ホテル到着が現地時間の16時頃、それから荷解きして4時間近く眠るとちょうど現地のディナータイム。ホテル近くをうろついて、庶民的な現地人っぽい人が入っているレストランで食事。サラダはキュウリとピーマン、トマトなどをちまちま切った上にチーズをかけたもの。子羊のグリルとビール、グラスワイン。飛行機で勧められて勧められて勧められて飲みすぎた。逆か、飛行機の費用内で飲めるうちに飲んでおいたのでグラスワインで済んだというべきか。

知人は、どこの航空会社でかは知らないが、小瓶で供されるシャンパンを3本要求すると言っていた。本当の「ビジネス」だったらこんな利用の仕方をするやつはいないだろが!