スペイン旅行 2日目

スペイン旅行 2日目バルセロナ
 
 部屋から降りていって、ホテル出口から左へ行けばそこはマクドナルドであることに気がついた。ホットミルクとコーヒーとクロワッサンを買い、部屋で食事。ホテルの朝食は部屋代別で一人当たり22ユーロ!評判はいいらしいし、1日くらいは食べてもいいが毎朝二人で44ユーロ(5,000円くらい)はありえない。部屋には電気ポットもあるのでお湯を沸かしてかねて用意の緑茶だって飲めてしまう。
 
 その日はツーリスト・バスに乗ることになっていた。それはどういうものかといえばバルセロナの主要な観光スポットを回ってくれるもので、一方通行ながら乗り降り自由、1日券と2日券とがある。乗っているのはほぼ全て観光客なので、スリの心配もない。バスの路線を調べて、行きたいところで降りて観光し、やって来るバスにまた乗って次に行くことが出来る。後でわかったことだがスペイン主要都市にはこのバスがあり、大変便利であった。
 
 で、チケットを購入し、停留所探さねばならない。2ルートある片方のバス停はバルセロナ・サンツ駅にあることはわかっていたので、外に出てみたら当のオレンジ色のバスが走っていた。(後でわかったが、バスの色とルートの名前とは一致しない。行き先表示をちゃんと見よう)それで駅の周囲を一回りしたら、小さなバスセンターがあり、チケットはそこで買えた。これまた後でわかったが、バス停はホテルの出入り口から出た目の前のタクシー乗り場の横断歩道をまっすぐ進めばそこにあった。更に更には、そのまままっすぐ進めば左は大通り、右側はレストラン街で、イスラムな皆さんや中華な店も沢山あるので日曜も全く困らないのであったが
その時は知る由もない。道に迷わない個人旅行なんてこの世にはない。
 
 バス路線の片方は海側、もう片方は主に市街地を走り、いずれも1周が2時間以上。1日券が28ユーロ、2日券が39ユーロ。最初にイヤホンを渡してくれて、日本語音声ガイドもある。私たちはまず、山側のオレンジ・ルートのバスに乗った。
 
 バスは2階建てで、当然皆、見晴らしが良い2階に行く。重心の問題があるせいか、バスの運行はゆるやかだった。周囲は親子連れはいたが、若い人のグループは少ない。6月の始めなので、まだバカンスシーズンは始まったばかりで学校も終わっていないはず。なので当然の帰結?観光スポットにいるのは個人旅行者が多かったが、それはバルセロナという土地柄なのかもしれなかった。
 
 同じバスの中高年の皆さんは、失礼ながら動物園みたいだった。そのへんのわんこよりも濃い腕毛をもつおっさんとか、猛禽類みたいなおばさんとか。毛深いのはマラリアから身を守るためという説があるらしいが、なるほどあれじゃ蚊が刺そうにも腕毛の中で道に迷ってしまいそうだった。しかしそれならそのへんの日本人と結婚しても、腕毛が薄いことを理由に蚊に刺されて早死にされて苦労することになる。何がすごいって、男女ともそういうことなのだ。
で、日本人を省みれば草食小動物っぽくて、同じ動物園でも檻ではなくて小屋で十分、って感じ。いや、入りたくはないけど。
 
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バスから見るバルセロナ市街の建築物は概ねベージュの団地みたいで、余計な装飾は少ない。そんな中に忽然とガウディの建物が出現し、モダンアートの大きなオブジェが築かれている。その後訪ねたバレンシアは本当にきれいな街だったが、バルセロナは他の建物がこざっぱりしているからこそ、オブジェやガウディが映えるのだった。
 
途中でオレンジラインを降りて、グリーンラインに乗り換えた。こちらは海のビーチ横の道を通る。海風が強くて寒い。上が25℃くらい、最低気温が13℃くらいだが、曇ったりすると本当に寒い。この気温を聞いて持って行った保温用品はユニクロのカーディガンとヒートテックの下着、各々1枚づつ。このときは寒かったが、結局コレだけで十分だった。・・そう言えばバルセロナにもユニクロは出来るらしく、ロレックスの隣に出店予告が出ていた。
 
 山の上の教会に行こうと夫が言い出し、有名どころのグエル公園をすっとばかす。バスを降りたところで(ここのツーリストバスは降りると言わなくても停車場には必ず一定時間停車してくれるので降りそこなうことはない。)近くのカフェで食事。粉砂糖をふりかけたのやらチョコレートがのっかったのやら菓子パンが豊富にある。とても大きかったりするので一瞬テンションが上がるが、よ~~く見ると普通のラインナップ。日本のと大して変わらない。
 
 クルミとハムとモッツアレラチーズと干しブドウが載ったサラダとコーヒー。サラダはそれなりの量があるが、7ユーロだったか、値段もそれなりである。ただ、この組み合わせは美味しかった。トイレを借りたあと、出発。まずはケーブルカーの停車場まで歩かねばならない。私は出発前にEテレの旅行用スペイン語講座でちょこっと勉強していて、その中にはちゃんとケーブルカーのスペイン語、「フニクラ」が出てきた。しかしまさか2日目に使うことになろうとは。
 
 バスの解説ではこのあたりは凝った豪邸が多いというので、きょろきょろしながら坂道を上がる。途中、遊歩道らしき看板を見つけるが、行った先で閉じてたり、違うところに出たら困ると思ってそのまま道なりに進む。左右には元・豪邸なのか一軒屋のレストランや語学学校らしきものが並ぶ。本当にこの道でいいのかと不安になったところで若い男子が通りかかったので覚えたとおりに聞いてみた。「おいーが、せにょーる!どんで えすた、ふにくら?」と。
 
通じた。日本語はドイツ語も近いと言われるがスペイン語の発音の近さこそはダントツなのである。問題は、下手に上手く聞こえるので相手が安心してぺらぺらしゃべり、おかげで何がなんだかわからなかったりすることだが、大抵は相手の身振りが激しいので何とかなる。
「おいーが」は、ちょっとすいませーん!という意味で、これはどこの国に行くときでも調べておくと便利。続く「お兄さん」、「おねえさん」、はては「奥さま」も覚えておくといいが、中国では「おっさん」、いえ「おじさん」がわからなくて困った。正解は「先生」だったが。
 
 「どんで えすた」は、「どこにありますか?」の意味で、目的語がフニクラくらいならいいが私は「うちのダンナ」や「長袖」にも応用した。日本語で長袖のシャツはどこにあるかと聞いても問題ないけれど、スペイン語では違うような気もする・・・が、通じりゃもう、どーでもいいのである。
 
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 本当のところはフニクラまで歩かなくてもブルートラムというのが走っているはずだが、その日は休みだった。で、たどりついたフニクラに乗ってティビダボの丘、標高にして535mの山頂を目指すことになる。山頂には教会もあるがしょぼめの遊園地もあり、同じ尾根道にはガウディとは対極な外見のテレビ塔もあって、ここに上るとバルセロナと地中海が一望できるらしい。観光スポットとして有名なのは、山頂ではなくて途中にあるペドラルベス修道院だったが、夫はそうではない方を目標とした。遊園地と教会は隣接しており、乗り物券を買わなくてもどんな感じか見ることだけは出来る。小高い丘から見下ろせば、見えたのはお化け屋敷とプールつきの家だった。教会はまあ、教会だった。新しめの。こんな山の上にあって、どんな人達が礼拝に来るのだろうと思う。それでも観光客達が何人も石段に座り込んでアイスクリームを貪っていた。なぜか頂上よりも下に天文台がある。
 
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 帰りのケーブルカーから降りると、目の前には先ほどみた遊歩道の地図があり、そちらに行く人々が見えた。自然の中ついていくと、ほどなく最初に見た場所に到着。ここからまたオレンジラインに乗り換えてホテルに帰ろうとするが、バルセロナの観光コンテンツは半端なく、また海側に行ったかと思うとモンジュイックの丘をぐるりぐるりと登り、その道の植生も楽しかったがカタルーニャ美術館、ミロ美術館にオリンピック・スタジアムにときて、夫は思わず「東京のみどころってどこだろう・・・」とつぶやく始末。東京において必見場所を巡る2時間コースを果たして2種類作れるのかどうか不安になったらしい。
 
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 ツーリスト・バスはホテルの目の前に停まり、降りる。いやもう便利。夕食まで休むことにする。スペインの夕食は8時から9時。スペイン人なら小腹を慰めるべくバルでタパスをつまみながら1杯ひっかけることになるが、そんなことしたらまともな夕飯など食べられない。
 
 午後8時過ぎ、外は明るい、さて出陣。前出のバス停の先に行けばレストランは山のようにあるのだがその時は知る由もなく、少し行くと日本料理店があり、中から出て来た板前が外でタバコを吸っていて、威勢よくタンまで吐いてくれた。店には「千客万来」なんて書いた色紙が貼ってあり、日本料理は人気だから彼は貴重な人材なんだろうけどそれにしても何でこんなところに流れてきたのかと聞いてみたかった。いやまあ借金こさえて踏み倒してとかではなくて、たんに意識が高い、ものすごく優秀な人材としてそこにいるのかもしれないけど。
 
ところで、バルセロナのレストランのメニューの看板にはスペイン語ではない言葉も書かれていて、これがカタルーニャ語というヤツだった。これが北になるとかの有名なバスク語が併記されているのかもしれない。日本だったら少なくとも書いてあるものは一緒なのに・・・面倒くさい・・・
 
 で、たどり着いたのは「カルメン」なる店だった。下調べしてたら出てきた、評判は悪くない店らしい。ちなみに日本でカルメンといえばアレだが、スペインでは女子の普通の名前だとのこと。だからって「良子」や「裕子」にあたるとは思えないが、深くは考えまい。どれ、と入ってみる。若い黒人女子が出て来た。英語を話すかと聞けば、威勢のよい「ノー!」の返事。それは「あるわけないじゃん!」的なノー!だった。
 
それからメニューと彼女との間で我々は四苦八苦することになった。あっちの方のテーブルではイカの墨煮の話などしている。メニューにはフォワグラがお得な値段で出ている。じゃ、前菜はこのフォワグラの何かにして、それから次はと見ればエスカロップ・・エスカロップって何だっけ?それで姉ちゃんに「エスカロップって何?」と日本語で聞くと「エスカロップってのはね」と言ってバサバサと鳥が羽ばたく真似をし、それからお腹を指差してくれた。えええ、エスカロップってフォワグラだっけ?
 
 そこで夫はメニューを組み立てる気がなくなり、姉ちゃんも面倒くさくなり、「定食にしなよ、定食に!ほら、これでいーじゃん!」それがまたワイン1瓶ついて20ユーロちょっと。
それであえなく陥落。つきだしはオリーブ、次はイチゴと焼いたヤギのチーズを入れたサラダ、パンにつぶしたトマトを塗ったものに生ハムを添えたもの、タラが入ったクロケット(コロッケ)イカのフライ、それにイベリコ豚のグリル、ポテト添え。
 
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 正直、悪くなかった。いや、サラダなんぞは絶品だった。しかし、カードは使えるかと夫が聞くと黒いカルメンは「はあ?何その言葉?もしかしてカードのこと言ってる?発音が違うよ、いいかい、カルテじゃなくて、タ、ル、ヘ、タ!」と。あまつさえサインをしたら、日本語のサインがおかしいというので「うきゃきゃきゃきゃきゃ!」と笑いやがった。くくっ。
 
 サービス料かえせといいたかったが、彼女はサービスらしいサービスは、した。向こうに言わせれば「スペイン語もまともに話せないくせに、スペインに来てんじゃねーよ、ばーか!」
ということなのだ。なんというか、ある意味清清しかった。彼女のことを尊敬はしない。しかし、すごいとは思う。なんか、うらやましいような、そう思ったらお終いなような?
 
 別の席ではスペイン語が堪能な中国人が3人で食卓を囲んでいた。じゅわわわーっと大きな音でそちらを見れば、熱くした石板のようなものが置いてあり、その上で豚肉を焼いていた。
どう見ても韓国料理のサムギョプサルそのもので、あれは店の名物かと聞きたかったが、ま、そんな会話が出来るわけもない。外はまだ明るく、近くのお店でビール買って帰った。